お経

 6時半に起こす。
 お経をあげる。これにも、こつがある。ばあちゃんと並んで座る。まず、ろうそくをつけるのを見ていて、間違うときだけ誘導する。ついたら、マッチの火を消して、マッチ棒を入れる穴に誘導づる。ほっておくと、線香立ての灰にさすから、マッチ棒ばかり増えていやでしょう。次にばあちゃんは線香を1本手にとり、半分に折る。これは右手に持った線香を左手でなすりながら、半分の位置を確かめている。大体うまく半分になる。それを持ってろうそくの炎でつけるのだが、これは難しい。右手が震える。「いらち」のばあちゃんはつくか、つかないかのうちに手を引っ込めるから、つかないときがある。防ぐにはばあちゃんの右手に私の右手を添えて安定させ、私の左手でろうそくを覆う。ばあちゃんの視界をさえぎり、炎が見えないようにすると、あわてて手を引っ込める心配がない。たまに私が考え事をしていると、ばあちゃんにやられてしまうので、わずかな時間、しっかり見守り。線香がつくと、あとはお経の本を持って一人で読むので、ほっておけばよい。横で聞いていると、いきなり、鉦をたたくので、耳がガーンとなる。なにしろ、思いきりたたいて容赦がない。