ペーパームーンに着く

 もう7時10分前、ぎりぎりではないか。玄関を入り、受付はまるちゃんにまかせて奥に進む。ピアノのあるホールで講演があるらしい。
 席に荷物を置いて、さっそくトイレを探す。他の人が「ここ、ここ」と言っている。大きな戸に絵が描いてある。なんとも派手なドア。引き戸でもなく、押して入るドアでもなく、真ん中に芯があり、片手で押すとかる〜く回転する扉だ。トイレは洋式で、腰かけて足が来る部分の下に丸い出っぱりがあり、はずせるふたがついているようだ。トイレットペーパー以外の物を流してつまったときは、ここをはずして取るのだろうか。手すりもついているし、快適そうだ。なによりとても綺麗。トイレが綺麗だと嬉しいね。
 前に「さくら会」で見学に行った特養を思い出す。あそこはほんとに「箱」だった。大きいし、廊下も広いが(経営者が『車椅子2台がすれ違える幅が規格です』と言った)殺風景この上なし。ビルの会議室のようだ。おまけにトイレに座ると、足が床に届かない。「安心して用を足せないでしょ」と言いたい。
 「ペーパームーン」は飾りがいっぱいある。作品があちこちに飾ってある。まるで幼稚園か保育園の感じ。年よりも子供も同じ感覚?そこらが私にはわからない。作品はどれもかなりすごい腕前だ。窓際のボックスにはお手玉だの、色鉛筆が綺麗に削られきちんと並んで収まっている箱だの、丸い紙だの...忘れたけど、とにかくいっぱい。奥の食堂らしき所には、低いテーブルといろいろな椅子があり、飲み物コーナーには「どれでもご自由に」とある。食堂は角にあり、その角を曲がった奥は何だろう?
 玄関に戻り、入り口の事務室の廊下の看板を見る。「○○施設認可」許可証のようだ。「営業日 年中無休」とある。これはすごい!年中無休なの?助かるなぁ〜。土・日・祝日・正月に「ぼけ」ばあちゃんが正気に戻ったりしないもんなぁ。うらやましい〜!!!
 また受付に行く。反対側では本を販売していて「いろ葉レンジャー」も積んである。入浴の本などもある。講演を聴きに来るのは、プロの介護者がほとんどだから、どんどん売ってね。
 7時30分を過ぎた。着席する。正面にスクリーンがある。その横の壁には「雪景色」の貼り絵がある。綺麗にできている。まるちゃんに「中迎さんは?」と訊くと「あそこ」と言って、端っこでパソコンを操作している人を指す。「えっ、随分感じが違うやん」と言うと「彼女の親戚が美容院で、やってもらうらしいよ」と言う。そういえば「いろ葉レンジャー」の本の中迎さんは今日のようなふわふわだ。去年はもっとずっとおとなしそうだった。感性豊かで華奢だった。「彼女も強くなったのよ」とまるちゃんが言う。