畑に行く

 2時になった。「畑に行こう」と誘うと「あんた、行ってきて」また始まった。なんとか、トイレに行かせて、また誘うと素直に立ってくれた。「だいじょぶかなぁ?」と言いながら、長靴をはき、外に出る。私が裏口から鍵をかけて出てみると、ばあちゃんは川上さんとしっかり!手をつないでいた。「ばあちゃん、いつもはしっかり歩くんですよ。手をつなぐのは甘えているんです。甘えられる相手をしっかり見てますねえ」
 大東さんはうちの家やら景色や、桜・つつじ・八重桜などを写しておられた。トンネルでばあちゃんと川上さんを撮ってくださった。
 畑は広い。ここも写す。ばあちゃんは「でけしまへん」と言いながら草を引く。草引きばあちゃんも写す。私が苺のパオパオを開けてランナーを切るところも写してもらった。「ちょっとこっち、向いて!『やらせ』だけど」と言いながら...だって、この前まで「髪の毛伸びて、やまんば状態」だったばあちゃんが散髪したのも、いつになく綺麗な服を着ているのも、家の中が久々に片づいているのも、み〜んな、カメラを意識して、特別!だもん。あはは。
「私、介護の名に値しません。世話なんかしていません。ばあちゃんと一緒に暮らしていたら、80過ぎて勝手にぼけたんです」と言うと「それでいいのです。ばあちゃんに寄り添って生きているでしょう。昔は皆、そうだったんですが、今はなかなか無いのです」と言われた。入所する人が多いのでしょう。私も「特養に入所を申し込んでいますが、100人待ちなんです」と言う。何が何でも「在宅」とは思っていないのです。
「でも、こうして、自然に年老いて、90過ぎたら、楽に死ねますよ。極楽大往生です」と言われた。鳥海房枝さんも書いておられた。「年寄りの仕事は死ぬことです。上手に死ねるようにお世話をするのが、私たちの仕事です。身寄りがなく、一人でくらしていて、ぼけたとしても、ヘルパーが毎日訪問していれば、亡くなってもすぐにみつけてあげられる。綺麗なご遺体でみつけてあげられる。お葬式を出してあげて、無縁仏としてまつってあげればよいのです」よくわかると思う。
 川上さんも大東さんも「ばあちゃんは働きものですね。今も草引きの手つきが良い。若いときはしっかり者だったでしょう」と言われた。そうです。ばあちゃんとじいちゃんが築いたのが、この畑。それを見てほしかったのでした。
 今日はとても楽しくて、おもしろかった。ばあちゃんもご機嫌でした。ありがとうございました。どんな記事になるのか、楽しみ。