閉めて歩く

 ばあちゃんが4泊5日のステイから帰ってくる。午後は田んぼに行かず、冬物毛布とばあちゃんのこたつカバーの洗濯をする。洗濯機で大胆に洗う。
 玄関でお金を数えていたら、クリーニングやさんが出していた冬物をドバッと持って来てくれた。不思議そうな顔をするので「ばあちゃんがショートステイから帰るから、利用料を渡すねん」と言うと「歩いてはりましたよ」と言う。配達の途中で、道を歩いているばあちゃんを見ているのだ。「そうや。首から下は元気やけど、頭はあかんねん。ぼけてるねん。そうやから上の老人ホームに預かってもらって、その間に仕事をする」と言うと、にやっと笑った。もともと無口な人で、笑った顔を見たことがない。「首から下は元気」がおもしろいとみえる。
 クリーニングやさんと入れ違いに、ばあちゃんが帰ってきた。ぼけっとしている。「便通がありません」との連絡だ。別にかまわん。ばあちゃんを家に入れておやつにする。あとは部屋に寝に行った。疲れたのだろうう。
 返ってきた冬物を干す。毛布とこたつカバーを洗う洗濯機が回っている。こたつ布団を干す。
 メール便を取りにくる。何もかもいっぺんにくる。
 ばあちゃんは起きてきて、どこもかも閉めて歩く。夏になると閉めて、世の中が明るいと閉めて、何もかも逆らうのが、ばあちゃんだ。ばあちゃんが閉めた雨戸を私が外から開ける。干した毛布を応接間のガラス戸から入れていると「ここ、閉める」とやってくる。裏口から干した冬物を入れていると、やってきて「ここ、閉めな、あきません!」とやってくる。すごい!興奮している。