気がついたら、できなくなっていた

 おふろに入っても、なかなかあがらない。私が耳元で「待ってても、誰も呼びにこないよ。どうする?」と言うと「わかりません」と言う。「勝手にあがりよ」と言うと、困った顔になる。指示してほしいらしい。
 この前「タオル、絞って」と言ってみると、ジュブジュブであった。ばあちゃんはもともと腕力が強く、何でもカチッとできたし、キュッとしぼるのなんか、朝飯まえだった。できなくなってたんだ。いつも「水もしたたる」で上がってくるもんね。
 お経もそうだ。「ニョロニョロ〜」どころか「南無〜」と二語ぐらい読んであとは引き伸ばしている!あはは。
 畑に行こうと思い、手ぬぐいを渡すと、首に巻いたことがあった。「姉さんかぶりをするんだよ」と言いたいのを我慢して、手をそえて後ろで結ぶのに誘導した。
 気がついたらできなくなっていた、ということだ。できなくても、かわりに何か思いつくから、止める間もなくやってしまって、とんでもないことになることもある。