演じない

 よそのばあちゃんが、娘のことを忘れて「お姉さん」だと思ったりすることがある。でも、その人は自分の名が言えて「お姉さん」の名も言える。だから娘さんは「お姉さん」を演じたりしている。女優さんなみに。
 うちのばあちゃんは尋ねたら自分の名は言える。前は「お母さん」の名も言えた。姓はだめ、自分の姓を言っていた。今はやってみてないので、わからない。娘の私の名は、言えない。だから私は「あらま、今日は『お母ちゃん』と呼んでるわ。ちょっとはつながってるな」とか「今日は『おっちゃん』かい?あはは」とか、そのときどきを楽しむが、相手役を演じることはない。