「雨です」

 畑に行くときは元気だった。途中でしゃがんで道の草を引きかけたぐらい...
 下の段で「もう行けません。休ませておくなはれ、お母ちゃん」と言う。さっきは私の写真を見て「知らん」だったのに!無視してゆっくり歩くとついてきた。
 畑に着く。私が芋を掘り始めると、ついてきて、草を引くが、私が谷に落とした芋の上を歩くのだ。「立って!」と言うと、わからない!日本語、忘れた。「立って」と言いながら手をとると立った。「向うに行って引いて」と言うと、えんどう豆が終わった畝に行った。「あ〜あ〜」言いながらぐんぐん引いては、草を畝に上げる。夫が猪よけの網を張りに来て「何も無い畝か?」と訊く。あはは!無い畝よ!
 雨がピリピリ降ってきた。ばあちゃんは「雨です。帰ります」と言いながら、ぐんぐん引いていく。わかっているのか?わからんのか?わかっていてもやめないのか?連れて帰った。ぬれたので着替える。部屋に戻った。寝るかな?寝なかった...
 私は台所を暗くしたまま洗濯をする。芋を届けたい。でも、ばあちゃんは?寝ていない。玄関の戸を開けて出てから「雨やから、行かれしまへん」と言ってまた入ってきた。布団に入って外を見ている。これなら行ってもいいかな?