ついて来た!

 1軒目に行くと留守だったので、置手紙を書き、芋を置いて行く。2軒目はいたので、ちょっと話す。3軒目に夫が行っていて、話して外に出ると、十字路をばあちゃんが歩いている!傘をさして、とっとこ、とっとこ、歩いてくる。
 十字路の角の家の呼び鈴を押しそうに見えた。ばあちゃんに近づくと、私と認めない距離だったので「乗せてもろてもよろしぃか?」と訊く。
 ははぁ〜ん、家中を探し「誰もおらへん、帰ろう」と思ったばあちゃんは、門に出て、いつも「車」(送迎車)が向かう「東」に向かって歩いたのだ。
 以前は「帰ります」と言っても、畑のある「西」に向かい、畑から「でんき、ついとる。呼んどってや」と言いながら診療所に向かった。そんなもの、忘れて久しい。私と畑に行っても、そこにとどまっているもの。
「帰るよ」と言うと、歩いてきた中学生の女の子に助けを求めるように、ばあちゃんが問いかけたので、その子は困って返事につまった。私が「ごめんね」と言うと後ろからゆっくり歩き、追い越すでもなく、自分の家の曲がり角までついてきた。びっくりしたかな?
 ばあちゃんは誰もいなくなると、心細げに「あ〜、しんどい、あ〜、腰が痛い、あ〜、こらえておくなはれ」と歩いては休み、休んでは腰を伸ばし...進まない。そんなはずないやろ?行くときは、ぽこぽことさっさと歩いたんやろ?
 やっと家に着くと、ふじちゃんから留守電が入っていた。「ばあちゃんが歩いてるよ」電話をして「つかまえたわ」と言う。「そう。びっくりしたわ」とふじちゃんが言う。ほっといても大丈夫なのは、完全に「寝た!」と確かめてからやね。
 すったもんだ...寝てしまった。また晩ご飯のタイミングを逃した。「ご飯を食べさせてない、虐待だ」と訴えられるだろうか?