引きだし

 「つどい場さくらちゃん」に行く。入り口のインタフォンで呼ぶと「はい〜」って、まるちゃん、いつもと違うお優しいお声。誰を待っていたのだろう?
 早苗さんからファックスが来ている。「まるちゃん、お疲れでてませんか?前夜3日間ぐらい、寝てない、飲まず食わずだったんじゃないの?」う〜ん、早苗さんは優しい。そこへご本人登場。ボランティアののんちゃんも加わって、4人でわいわい。もっとも、のんちゃんはおとなしいので、にこにこ笑って聞いているだけ。○様、早苗さん、私、どのせりふが誰のか?ご想像にまかせる。
 「残念!高口光子に負けた」「勝てっこない。あのペースに巻きこまれたらあかん。頭がいい人だから、裏から皮肉って言ってる」「思わず聞き惚れて、笑ってしまうもんな」「最初の自己紹介は準備できたけど、あとが続かんかったよ」「よし、今から引きだし、いっぱい作って来年に望もう。ああ言えばこう言う」「たまに集まって作戦会議しよう」
「高口さんは『家族を選ぶ』て言うけど、西宮の施設、レベル低いよなぁ」「利用者を選ぶもんね。『徘徊する人、暴力振るう人、お断り』て、アンケートに書くんやもんね」「そこまでひどいとは、高口さんも鳥海さんも知らんやろう」「西宮の介護職、『家族を選べ』あれ聞いて『同感!』て思ったら困るなぁ」「ほんま、ほんま」「『文句も言わんのが良い家族』なんて思われたら、とんでもないよ」「ばあちゃん、預かってもらってるからって、何も言わず遠慮している家族かって、多いもんな」「『人質』か?学校と一緒やな」「先生の側から見ても『生徒は人質』なんて思うの?」「別に思わないよ。とんでもないこと言う親もいるよ。常識ある親はわかってくれるよ」
「さあさ、ご飯、ご飯。すもも、俳句に行くんでしょ?」「俳句?」「そう。書けない、書けない、言いながら、なんで俳句、習っているかって?感性を磨く。それと、余分なことを言ってはいけない。修業!ブログ、書いてから最後の一文を削ることもある。それを言っちゃおしまいよ」「ブログは削れるけど、言った言葉は消せない」「ん?」
「特養だって、預けっぱなしで、足も運ばない家族、いるやん」「それもそれ、一概に言えないよ。生活に追われる人もいる。預けたその日に、あまりにひどい扱いを見ると、悲しくて行きたくなくなる人もいる」
「なんでそれをあの場で言わんの?」「今、気がついたんや。天才ちゃうから、一晩寝ないと浮かばへん」「すももは、初めは勢いよいから怖がられるけど、すぐ、へこむんやから」「えへへ。いつも元気な、わけない。それなりに体調整えて行くから元気に見える。高口さんも、初めて聞いたときは『すごい』と思ったけど、次のときは、ばあちゃんがどんどん悪くなっていく時期で、私がへこんでいたから、聞く気力がなくて欠席したよ」「すもものあかんたれ。こう見えて気が小さい。『うつ』の時は、家に篭るから困る」「あはは。今回は、聞いて、あははと笑えるぐらい、持ちなおしたんやんか。何点くれる?」「50点」「きつ!でも谷底からはい上がったんやから、いいか。0点からの出発と思えば上出来」
「会場で聞いてた家族は『もっと言うて』って、私らに期待してはったやろね。申し訳ない」「来年、家族、増やそうよ」「数で勝負か?」
「言うの、忘れたんやけど、つどい場さくらちゃんがなかったら、ばあちゃんを殺してたかも知れへん」「『親を殺して私も死にます!』って思いつめた人が、さくらちゃんに支えられた」「その支えられた人、介護者本人がこの会の運営の裏方さんをしている。『介護は終わったので、役に立ちたい』と言う人が応援して働いている。『全国の皆さん、今日、この会場でピンクのTシャツを着て働いている人たちがその人です!』と言えば、かっこよかったやろね?」「裏方さんに感謝、感謝。来年は絶対、言おうね」
 と、まぁ、なったのだ。でも、まるちゃん、今日はきつい!ほんの3ヶ月前「人生最大のショック」で泣いてる私と一緒に泣いてくれたまるちゃんは、どこへ行ったのだろう?間にクッションが二つも入ると、強烈パンチを投げてくるのかしら?