分科会「高齢者施設におけるターミナルケアの実際」鳥海房枝さん

 鳥海さんの話は、いつ聞いてもおもしろい。「お年寄りの仕事は死ぬことです」とか「死なないのよ、これが。そろそろ危ないって言ったって、ここに入ったときから、そろそろなんだから」とか「ターミナルっていうの、7回宣告してもまだ死なない」「『そろそろ危ないです』と家に電話したら、家族が『今、朝ご飯作ったから、食べてから行きます』」とか...普通の人が言うと「あかんやろ?」と思うせりふも、鳥海さんが言うと豪快で笑って笑って...おもしろい〜。
 鳥海さんはまず「マスコミのとりあげかたは、年をとっていくのがイヤになりますよね。今日の介護家族は(私たちのこと?)大変なのだが、心ほのぼのしますよね。『たたかうおばあちゃん』も写真に写るとかわいいですね。じつは大変でも...」そうなのです。関西人が「えらいこっちゃな」と言ってくれると「そやねん!」と言ってしまいます。「かわいい」とは何事か!?
 鳥海さんは東京都北区立特別養護老人ホーム清水坂あじさい荘で、この4月からは嘱託になり、総合ケアアドバイザーをしておられる。後半のスライドで見ると大きな施設である。ショートステイが40名もある。そのうち2名分は、緊急用に空けてある。
 ひとはとしをとったら、ぼけたらどうしよう?体がきかなくなったらどうしよう?お金がなくなったらどうしよう?死ぬときはどうなんだろう?と不安になる。衰えていったときの自分とのおりあいのつけかたがわからない。具体的に、どうなるか、がわかれば不安は消える。
 特養はそこで死んでいけるから不幸ではない。この人がいい顔でさいごまでいけるかどうか、が特養のしごと。「そろそろ」の見分け方は「体重減少」「食べない」「声の大きさ」
 入所してくる人については、自分で食べてくれる人が最高。「外出」(徘徊ではない)する人をつかまえるには?服に名札をつけても脱げばわからない。白いバレーシューズをはかせる!
おなかがすいているらしい人に何が食べられるか、やってみる。おにぎりにゆかりを混ぜて海苔を巻くと食べない。海苔を自分で取って食べる。あ〜、海苔がごみに見えた。これは「長谷川式スケール」より確実な見分け方になるかも知れない。白いおにぎり・ゆかり入り・海苔巻き、といろいろ並べ、どれを取るか見てみる。海苔がごみに見えるようでは痴呆が進んでいる。
「眠くなったときが夜、目が醒めたら朝、空腹が食事どき」食事の時間なんてせいぜい2時間におさまる。昼夜逆転はあかんか?寝ないじいさんをストリップに連れて行くと、がくっと寝た。くたびれるほどの刺激のある日中をあげればいいのだ。
 家族とさいごのときについて話し合う。人は誰でも死ぬときがくる。(書類は出さない。はんこを押すのも最小限にする)時期が近づいたらどういうさいごを迎えるか、一緒に考えていきましょう。亡くなれば、個室に移し仮祭壇でお焼香をする。昼なら館内放送で知らせ、スタッフと入所者も玄関で見送る。すると中西ばあさん(90すぎ)が「私はなんの心配もなくなった。○◎さんのようにご飯食べたのを忘れてもOK。おしりにうんこつけても世話してもらえる。今日のとみさんのような終わり方をするのもOK。いくらかかる?」「50万円」「じゃあ、それだけ残して使っちゃっていいんだね?」死ぬ場所が85%が病院の時代、家族に対する教育の場でもある。365日来ている家族がいた。朝8時から夜8時までいる。8年数ヶ月通いつづけた。亡くなったあとは、毎日ボランティアに来てくれる。「400円でご飯食べられて、雨風防げて、ここが一番いい」って言いながら来る。最高!
 ここで前半が終わり。このとき司会者にマイクを借りて「たたかうおばあちゃん」を配る。
 後半は別の分科会に移動する人もいて、スライドからスタート。足の曲がったじいちゃん登場。見たことある。前に鳥海さんに見せてもらったのかな?大腿骨骨折でもこんなに曲がらない。手術後痛みに耐えて曲げていったのだろう。床ずれもひどい。風呂に入れてないのだ。食はドロドロの液を注射器でのどへ入れるとゴクッと飲む。「何食べたい?」と訊くと「どらやき草加煎餅、栗饅頭」「食べられるようになろう」すわる練習をする。5年ぶりに入れ歯を入れる。入れる前の顔と入れた顔を並べて写すと、引き締まっている。水が飲める。酒が飲める。食べた!わがままで食堂に行かない。寝たまま食う。5年間我慢に我慢を重ねてきたのだ。ハイハイと従う。ソフト食(おじや、魚)右手にスプーンを持って食べる。ここまで来るのに3ヶ月かかった。うとうとしていて血液検査をすると腫瘍マーカーが高い。息子夫妻は「このままでいい」都立病院に移り亡くなったが、じいさんが「頑張って生きとると最後にいいことあって人生、チャラになる」と言った。
 後半は「介護時代の看護婦」だが、数字や専門のことはわからないので、パス。宣伝!
「本日のおむつはずし学会の講演会がDVDになります」各巻1800円〜2000円
三好春樹「パーキンソンケア」「認知症のケア」 
高口光子「ターミナルケア」「介護保険施設での看護・介護リーダーとしての仕事」 
鳥海房枝「介護時代の看護婦」「生活モデルのターミナルケア」 
安永道生「生活づくりの出発点は座位から」 
申し込みは「関西看護出版・出版部」〒595−0024大阪府泉大津市池浦町5−13−13 
(フリーダイヤル 0120−58−0481)電話0725−33−0371
  誤嚥しやすい物は芋・高野豆腐・すいか。汁だけ吸ってしまい、スカスカになるから。相撲取りさんに来てもらってついた杵つき餅は危なくない。買った餅が危ない。気をつけても誤嚥する。その場にいる人がすることは、つまった人を横にする。指をつっこんで舌の奥を押して吐かせる。背中をトントンやらない、かえって落ちていく。口の中を綺麗にして吸引する。
「あなたの笑顔は私の元気」と言いたいが「あなたの元気は私の迷惑」が真実だ。私が「職員がばあちゃんの好きなようにさせるからなめられている」と言うと「でもばあちゃんは人気者でしょ?」と返された。う〜ん、レベルの低い施設では「もてあまされている」が実際だ。