寝た!

 ばあちゃんが来ると「嵐」であった。皆が坂道をあがる途中でステイの車にあった。あいにく私の携帯電話が電池切れでつながらなくて、スタッフ君はおりかけた坂道をまたあがってくれた。
 ばあちゃんが車からおりる。どうしていいか、わからない。なんでこんなところにおろされるかわからない。車がいっぱいあるから乗りたいではないか。
 誰がどう話しかけようが怒るばかり。「ばあちゃん」と言っただけで怒る。私が「ここ、草、引いて」と言っても腰を伸ばしたままで、ちょこっと引いては「どないすんねんや?」「ここに捨てて」と言うと「ほってどないすんねんや?」せっかく引いた草を捨ててどうする?ってか?いちおう、もっともである、なんて感心していてはばあちゃんの「おとぼけぶり」を見逃す。
「もう、ほっといて。相手にせんといて」と言っても、介護職や介護者はそうはいかない。なだめたいらしい。「ばあちゃん、あんたに似てきたな」なんて会長さんが言うてどうするねん?私は「どうしていいかわからない」状態の「畑はじめてメンバー」がの〜んびりしていたり、「なんども来たメンバー」がいちいち訊くのを「勝手に自分で考えろ」と思ったり、家で用意した箱の薩摩芋も運ばねばならず、ばあちゃんに長靴をはかせたり、とにかく、やることいっぱいある。同時進行も無理だから、ね。
 でも、びっくりしたのは「わけぎを引くなら、向うの建物のほうから順に引いて」と言うと、あわてて埋め戻そうとした人がいた!子どもじゃなく大人だよ。他にも他にも、いろいろいろいろ「もう〜、幼稚園より悪い」と言うと「大人は言うとおりには動きません」と開き直る。
 あ〜、ばあちゃんはますます怒る。バスがいるから「乗れる」と思っているらしい。「どないするねんや?」「帰るよ」「乗るのんか?」「歩くよ」と言うと「はよ、せんかい」と言う。命令してきた。「待って。猪の網、閉めるから」と言ってやっていると「はよ、せい」小屋で荷物を積むと「はよ、せい」こんなときは簡単、こちらがテンションを下げればいい。ばあちゃんが怒りすぎると、ガーッと叱って止める。少しぐらいのときはこちらが静かにおちついて「あっちよ」といくと、拍子抜け、いろいろこつもあるのさ。初対面には「わ、すごい、親子!」と見えるだろうが。
 家に着くまで両者無言、離れて歩く。トイレに行かせたときに、ばあちゃんがガーッと怒って手を振り上げたので「だまれ!」と静かにさせるともう大丈夫。あとは牛乳とせんべい1枚、入れ歯を洗い「昼寝」と言うと寝たよ〜。2時50分だ。嵐、過ぎた〜。