十二単(じゅうにひとえ)

 春に咲く野の花である。ある年、よその家の土手に咲いているのをこっそり1株引き抜いてきて、玄関と道路沿いの花壇の端に植えたら、増えた、増えた。他の花を覆いつくす勢いである。紫の小さな花が縦に並んでついて、どんどん伸びていく。春から今までずいぶん長い間、咲いていたがさすがにそろそろ終わりごろだ。
 従姉妹に言うと「花は、こっそり盗んでくるのがええねんて。人にあげるときも、それとなく玄関に転がしておいてあげたら、ええねんて」??それは変だよ。それじゃあ、世間に広がる「花盗っ人」を肯定することになる。丹精こめた花壇から引き抜かれて怒っている人が聞いたら、怒るよ。