「田植えと品種」 by すももの夫

 皆さんも目にされているように、兵庫県のこのあたりでは、今が農繁期で田植えが行なわれています。今は機械が開発され、農作業もずいぶん楽に、速くできるようになりました。
 昔はそうではありませんでした。牛を使って田を耕し、物を運ぶ車も牛に引かせていました。私も中学生のころに牛を使った経験があります。牛は賢いので、ひとを見る、つまり若輩者が操ると、言うことを聞いてくれません。「代掻き(しろかき)」などかなり大変でした。
 そのころは「手植え」でしたから、苗が育つのを待たねばならず、6月に入ってから田植えをしていました。今は田植え機を使うので、小さい苗でも植えられます。「コシヒカリ」は5月の大型連休ごろに植えているようです。私が栽培しているのは「キヌヒカリ」で、4月末か5月初めに種をまき、20日から25日後に植えるのが目安です。ところが、今も6月に入ってから植える品種があります。それは酒米の「山田錦」です。酒造会社と契約栽培されており、皆さんも三木市あたりを通られたら、田に「旗」が立てられていますからご覧ください。「山田錦」を普通の米と同じように早く植えたところ、収穫した米は「これでは酒造に適さない」と会社から言われたそうで「以前と同じように6月に入ってから植えるように」なりました。
 またちょっと変わった話では、東南アジアの米地帯で「コシヒカリ」が栽培されています。「コシヒカリ」は寒冷地に適した品種ですし、日本政府は「種」の持ち出しを認めていないはずです。それは「中古のコンバイン」です。これは田んぼで稲を刈り、籾にしてしまう機械ですが、丁寧に掃除をしても機械の中のほうに少し籾が残ります。それを食べにねずみが入ったりするぐらいです。その「コンバイン」を東南アジアに輸出したところ、現地の人が機械を分解し、籾を取り出し、植えては増やして、品種として栽培するに至ったというわけです。