「星夜」高階杞一・作

 遠い北の海で
 シロクマがくしゃみをすると
 その音が
 風にのって
 遠い南の果てのペンギンに届く
 ペンギンは首をかしげ
 遠くを眺める
 (誰か風邪でもひいたのかしら)
 
   だいじょうぶ?

 その声が風にのって
 シロクマに届く
 シロクマは食事の手をとめて
 遠くを眺める
 (誰だろう?)
 
   誰かわからないけれど
   ありがとう、心配してくれて
 
 凍えそうな夜
 ひとりで空を見ていると
 いちめんの星のどこからか
 やさしい声が降ってくる

   だいじょうぶ?
   ありがとう、心配してくれて
  

  (「安穏」2008年秋号 浄土真宗本願寺派・発行 より)
 お寺でいただいてきた西本願寺の会報だ。詩人・高階杞一さんのことを知らなかったので、ネットで検索してみた。