「か(介護)い(医療)ご(ご近所)を結ぶ好い話ー認知症になっても見放さない西宮にするためにー

 三好春樹さん、松本一生さん、丸尾多重子さん、増尾千代美さん
まるちゃん:これからが佳境です。
三好さん:床ずれの予防にエアマットはやめよう。エアマットを使うと告訴されるというようにしよう。かわって使うのは高反発マット「ハッピーそよかぜ」です。ブリコラージュ70号・71号にのせました。私は持って歩いています。「ポータブルマットレス夜勤用」です。インドに行くときも持って行きます。「安静介護」から「ごそごそ動く主体」としてとらえる。生命はなぜできたか?いまだわからん。医療は「なおす」もの、「なおらん」とわかったときから介護が始まる。私たちの仕事です。問題行動ととらえるのではなく、見当識障害があり、オリエンテーションして探っているのだ。
 医療は1プラス。3プラスになると「どうしようもない」という基準がある。「あわせてあげなさい」というのが介護。
 Nさん、なかしまさんの話をします。(笑い)プライバシーを守れと言うのは、犯罪者・奴隷の世界の話で、これは恥ずかしい話ではない。プライバシーの語源は差別なのです。ぼけた老人はイノセンス、つまり「無垢で純粋」という意味です。なかしまさんは帽子を持っているので「どこ、行くの?」ときくと「ちょっとロシアへ」なかしまロシア事件です。「あ〜そう、ロシア?ロシアってどこにあるん?」これは極楽山のキリスト教施設です。「あ〜、ちょっと待って」と思案します。「あのね、教、ロシアへ行ってみたら留守だったよ」
 年に2回、でかけたがる人がいます。「どこへ?」田植えと稲刈りですね。
 人は過去に戻る。何時に戻る?大学教授だったら、教授に戻る。助教授には戻りません。今の自分が自分であるとは思えない。一番良いときに戻る。
 介護職の人、ここにいる介護職の人、一生懸命やっているのに浮いているんでしょう?ここへ来ている人はそうでしょ?浮いているんじゃない。皆が沈んでいるだけ。
 介護の7原則。精神の世界の中。てきとうにあわせてあげるのではなく、一緒にその世界に入る。「九十八歳の妊娠」の本の中「このとしで子をはらんでしもうた。あんた、育ててくれるか?」「あめでとうございます。ところで相手は誰ですか?」お医者さんだったんです。色街で働いていた女性は「お〜、あんたを待っとった」今から全く新しい人間関係を作るのはしんどい。過去の関係に似せる。これをメタファー、比ゆと言います。
 中国では「愚か者は月を指すと指を見る」と言います。現象には意味はない。その後ろに隠れているものをさぐる。
 「痴呆論」が一番売れています。印税にご協力を。今日の講師料は丸尾さんにカンパします。「ハッピーそよかぜ」も買ってください。
まるちゃん:松本先生が今朝一番にお見えになりました。御所の前から来てくださいまして「まろさま」と呼ばせていただいています。
松本先生:「まろ」の話を聞いてください。私は講師料ははっきりいただいて帰ります。
 今朝になって「20分ずつ話をせよ」と言われました。系統だてて話すのは得意ではないので、気持ちを共有したいと思います。昭和31年生まれ、50歳です。25年前に歯科医になり、寝たきりの人の治療をしました。そのとき歯科医として医者に相談したときの気持ちを思い出しました。今は精神神経科の医者です。医者は最初にこの人を輪切りにして、何をするか決める。医者としての仕分けをする。ここは大丈夫、ここは治せるか、であり、生活は見ません。口の中を切ったり、貼ったりすると血まみれになります。得意ではないな、と。(それで歯科医はおやめになったのですね)
 認知症の人をみるようになると、この人をみてもだめじゃん、家族をみないと、と思うようになりました。自分でも25年間、ケアラー(ケアする人)介護家族です。結婚して家内の親をみています。それでも足りません。地域の中には(1)本人(2)家族だけではなく、支援する人もいる。(3)支援食。訪問看護師は病棟看護師よりも能力の高い人が行くのです。その人が燃え尽きる。バーンアウトします。いずれ外国人の介護職にもつながる。食いっぷちには困らない(4)地域の中の介護職である。
 虐待。僕自身が虐待犠牲者です、妻から虐待されてます、と茶化さないとならないほど、虐待は辛い。悪意を持って虐待する人もいる。ヘルパーの来る日に限って姑の布団に針を刺す人。息子が親のお金を全部使う場合...でも、残りの2割は、一生懸命介護していても虐待するのです。家族が追い詰められていく。善意の加害者。気がついたら枕を口に押し当てて、3〜4分たってはっと気がつく...「もうやめて」と言いながら階段から突き落とす。次のような人が危ないのです。
1.「私は辛い思いをしたことがありません」と言いながら体に症状が出てくる。
2.「私の人生は〜さんの介護にささげる」と言う人は半年以内に破綻する。本人だけ残し、家族の者がいなくなった。夜逃げです。
3.「私は介護者として一人でやっていかなければならない」と言う人。辛い体験を共有していると辛さが減るのです。
 若年認知症の場合も、まるちゃんの「さくらちゃん」の役割に共感できます。