十二単

 ばあちゃんが帰り、昼寝をさせておいて、庭の草を引き、ゼラニウムを植えた。今は十二単が満開だ。背も高く立派だ。
 若い友人が犬を連れて通りかかる。「綺麗ですね」と言うので「よその家の土手から2〜3本持って帰ったのが、こんなに増えたのよ。従姉妹が『花はこっそりもらってきたら、根がつくんやで。『ちょうだい』言うてもらってきたら、枯れるんやて』言うんよ」と言うと「ほんとですか?」と訊く。
「嘘に決まってるやんか。『桃栗3年柿8年』言うでしょ?『柚子の大馬鹿』言うねんて。ばあちゃんなんか『柚子がならへんから、よその柚子もろぅて来て、枝にぶら下げて教えてやってん。そぅしたら次の年になった』言うねん」と言うと「ほんとですか?」と訊く。「嘘にきまってるやん。成長して実がなる年齢になったんやん」と言うと、笑う。「そんなんで、だまされてどうするん?振り込め詐欺の餌食になるよ」
 長年生きてきたばあちゃんには勝てないよ。