毎日小学生新聞より(ハスカップ市民福祉情報)

 キミもいつかは年をとる:/1(その2止) 日本は世界一の「長寿社会」
 「ところが近(ちか)ごろは、近所(きんじょ)の子(こ)に『行(い)ってらっしゃい』と声(こえ)をかけても、黙(だま)って行(い)っちゃうの。あいさつを返(かえ)したら気持(きも)ちがいいのにねえ」。少(すこ)し寂(さび)しそうです。
 中野区(なかのく)の北川信次(きたがわしんじ)さん(78)は、近所(きんじょ)の子(こ)どもになるべく声(こえ)をかけるようにしています。「親(おや)があまり注意(ちゅうい)しないから、悪(わる)いことをしたらしかるようにしています。その子(こ)が大人(おとな)になった時(とき)、生(い)きる力(ちから)になると思(おも)うから」と言(い)います。
 ◇5人(にん)に1人(ひとり)は高齢者(こうれいしゃ)
 2009年(ねん)9月現在(がつげんざい)、日本人(にっぽんじん)の22・7%は65歳以上(さいいじょう)。5人(にん)に1人(ひとり)が高齢者(こうれいしゃ)です。50年前(ねんまえ)の1960年(ねん)はわずか5・7%でしたから、急(きゅう)に高齢化(こうれいか)が進(すす)んだことになります。医療(いりょう)や衛生状態(えいせいじょうたい)が良(よ)くなり、平均寿命(へいきんじゅみょう)が伸(の)び続(つづ)けて、日本(にっぽん)は世界一(せかいいち)の「長寿社会(ちょうじゅしゃかい)」になりました。
 不景気(ふけいき)が続(つづ)くなか、お年寄(としよ)りたちは不安(ふあん)を感(かん)じています。「年金(ねんきん)は大丈夫(だいじょうぶ)かしら」「病気(びょうき)になったらどうしよう」と思(おも)っています。体(からだ)が不自由(ふじゆう)になったとき、介護(かいご)してくれる人(ひと)が足(た)りなくなるかもしれません。
 一生懸命働(いっしょうけんめいはたら)き、家族(かぞく)を支(ささ)え、子(こ)どもを育(そだ)ててきたお年寄(としよ)りたちが、みんな安心(あんしん)して暮(く)らせるような社会(しゃかい)の仕組(しく)みは、十分(じゅうぶん)ではありません。お年寄(としよ)りが不安(ふあん)だと、若者(わかもの)も将来(しょうらい)に不安(ふあん)を感(かん)じます。人(ひと)は、将来(しょうらい)の幸(しあわ)せを信(しん)じるから勉強(べんきょう)したり、働(はたら)いたりします。不安(ふあん)が多(おお)い社会(しゃかい)は、あまり幸(しあわ)せな社会(しゃかい)とは言(い)えませんね。
 これから、お年寄(としよ)りはどんどん増(ふ)えていきます。一方(いっぽう)、子(こ)どもの数(かず)は減(へ)っています。今(いま)は子(こ)どものみなさんも、必(かなら)ず年(とし)をとってお年寄(としよ)りになります。
毎日小学生新聞 2010年9月14日
キミもいつかは年をとる:/2(その2止) 家族に代わり社会で介護
 <1面(めん)からつづく>
 ◇医療費(いりょうひ)、年金(ねんきん)、介護(かいご)は……
 高齢者(こうれいしゃ)が多(おお)い社会(しゃかい)とは、どんな社会(しゃかい)でしょうか。
 高齢者(こうれいしゃ)は病院(びょういん)に行(い)く回数(かいすう)が多(おお)いので、国(くに)が負担(ふたん)する分(ぶん)の医療費(いりょうひ)がふくらみます。国民全体(こくみんぜんたい)の医療費(いりょうひ)=表(ひょう)1=は1985年(ねん)に約(やく)16兆円(ちょうえん)でしたが、2009年(ねん)には約(やく)35兆円(ちょうえん)にもなりました。高齢者(こうれいしゃ)はこれからさらに増(ふ)えるので、将来(しょうらい)、国(くに)が医療費(いりょうひ)を賄(まかな)えなくなるのではないかと心配(しんぱい)されています。
 次(つぎ)に、年金(ねんきん)。年金(ねんきん)は、若(わか)いころに保険料(ほけんりょう)を支払(しはら)い、老後(ろうご)にお金(かね)を受(う)け取(と)る「社会保障制度(しゃかいほしょうせいど)」の一(ひと)つです。若(わか)い現役世代(げんえきせだい)が高齢者(こうれいしゃ)を支(ささ)えるので「世代間(せだいかん)の仕送(しおく)り」とも呼(よ)ばれています。
 ◇逆(ぎゃく)ピラミッド型(がた)に
 総人口(そうじんこう)に占(し)める子(こ)どもや若者(わかもの)の割合(わりあい)が高(たか)く、高齢者(こうれいしゃ)がそれより少(すく)ない「ピラミッド型(がた)」=表(ひょう)2=だった時(とき)は、若者(わかもの)5人(にん)が払(はら)った保険料(ほけんりょう)が高齢者1人分(こうれいしゃひとりぶん)の年金(ねんきん)を支(ささ)えました。ところが、高齢者(こうれいしゃ)が増(ふ)えると若(わか)い人(ひと)の負担(ふたん)が増(ふ)え、保険料(ほけんりょう)が高(たか)くなる恐(おそ)れがあります。もらえる年金(ねんきん)の額(がく)も減(へ)る可能性(かのうせい)があります。
 介護(かいご)が必要(ひつよう)な人(ひと)が増(ふ)える一方(いっぽう)、昔(むかし)のような大家族(だいかぞく)が減(へ)り、介護(かいご)を担(にな)う人(ひと)も減(へ)りました。そのため国(くに)は2000年(ねん)、家族(かぞく)の代(か)わりに社会全体(しゃかいぜんたい)で面倒(めんどう)を見(み)る仕組(しく)み「介護保険制度(かいごほけんせいど)」を作(つく)りました。しかし、介護現場(かいごげんば)で働(はたら)く若者(わかもの)に十分(じゅうぶん)な給料(きゅうりょう)を払(はら)えないなど、課題(かだい)がたくさんあります。
 一人(ひとり)ひとりで見(み)れば、年(とし)をとることは貴重(きちょう)で尊(とうと)いこと。一方(いっぽう)、社会全体(しゃかいぜんたい)で見(み)るときは、制度(せいど)や仕組(しく)みがうまくいっているかどうかという視点(してん)が必要(ひつよう)です。【中嶋真希(なかじままき)】