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業界ニュース : 国民は「一億総介護者」 に!――居宅事業者連絡会レポート
投稿者: cmo7 投稿日時: 2010-9-17 13:00:00 (462 ヒット)

東京都社会福祉協議会 介護保険居宅事業者連絡会は、9月16日、介護保険制度の10年を振り返る「介護保険10年の課題と今後の展望を考える」フォーラムを都内で開催した。雨の中、約250の居宅介護支援事業者らが参加し、会場は満席となった。

フォーラムの第1部では、運営委員長の山田禎一氏の挨拶に続き、同会が実施した「介護保険サービス利用者調査」の結果が事務局から報告され、アンケート調査で集められた利用者の声が多数紹介された。

利用者アンケート調査は今年7月に事業者に配布し、9月8日までに641票を回収した。訪問介護サービスを利用する人に不都合・不便なことをたずねたところ、「サービス回数や時間を増やしたいが経済的負担が大きい」などが多かった。あったらいいと思うサービスでは、緊急時や介護者が休息できるレスパイトの対応を望む声が多かった。

調査結果の報告後、第2部の記念講演では、高齢社会をよくする女性の会理事長の樋口恵子氏が登壇した。
制度設立から10年を振り返って「介護保険の光と影」を切り口に語り始めた樋口氏は、まず介護保険の効果から検証。家の中で嫁が一身に担っていた介護が、密室から世の中へ解放され「見える化」されたこと、ケアマネジャーをはじめとする介護職が一度に多数創出されたことなどを評価し、今年4月の読売新聞による世論調査でも制度全体を評価している人は“大いに”“多少は”をあわせて96%もいることを告げた。
一方、影の部分である制度の問題点については、保険料上昇や老々介護・独居の増加でサービス量が不足する理由などで、「今後10年現行サービスが維持できない」と答えた人が同世論調査で87%に上っていると報告。
2度にわたる介護報酬の引き下げなどで財政的に「栄養失調」であると指摘し、利用抑制や膨大な書類による手続きの複雑さが進み、介護職の不安定、低賃金な処遇は「視界不良」であると断じた。

また利用者の尊厳をうたいながら、当事者主権になっていない制度を憂い、住民参加型を呼びかけるなら現在、機能不足が叫ばれている地域包括支援センターを評価する人(機関)がどこかにいてもよいと提案した。

今後取り組むべき課題について、財源を筆頭にあげた樋口氏は「高齢者の生活に不可欠な通院時の院内介助は、利用者の日常生活をよく知るヘルパーが行うべきだが、緊迫性のない介護予防事業は保険外にするなど、“仕分け”をして必要な財源の確保に努めるべきだ」と述べた。

講演の終盤では「今の日本は明治維新・敗戦・少子高齢化と3度目の“黒船到来”を迎えている」と独特の語り口がさえ渡り、聞き入る参加者らに向け、「プロであろうがなかろうが、国民一人ひとりが介護にかかわる社会になるべき。介護保険外サービスの地域の助け合いや、介護家族が就労しやすい勤務体制の整備など、ワークライフバランスにケアを取り入れた“ワークライフケアバランス”の世の中が理想」と、一億総介護者社会の構築を訴えた。

■取材協力
東京都社会福祉協議会 介護保険居宅事業者連絡会