「自立する老後のために」高見澤たか子著 晶文社 1998年

 はじめに 「ここで一人で暮らすから・・・」と言った父
1.子ども家族といっしょに暮らす
 1)しあわせ幻想・・・富田てるさんの選択
 2)痴呆の母を抱えて・・・井上さとみさんの選択
2.老いの問題を考える旅で・・・ベルギー
 1)子どもといっしょに暮らさない・・・デブロック夫妻の選択
 2)障害を持ちながら、一人で暮らす・・・ニコレ・イクスさんの選択
 3)高齢者介護の新しい取り組み・・・セント・ヨーゼフ病院の挑戦・1
 4)病院はホテルにあらず・・・セント・ヨーゼフ病院の挑戦・2
3.支えあいの社会をめざして・・・オランダ
 1)いまがいちばん楽しい・・・シェルマー・フーストさんの選択
 2)生まれ育った土地で老いる・・・ヤン・レーグネンさんの選択
 3)頼りになる家庭医制度
 4)在宅で暮らせるしくみ・・・ある町のヘルス・センターで
 5)自分の家で死にたい・・・リーホルストさんの選択
 6)もしも痴呆になったら
4.老いの日々をどう暮らすか
 1)妻が倒れた・・・安中靖さんの選択
 2)植物人間の妻を介護して15年・・・三原正さんの選択
 3)母をよみがえらせた・・・末崎文子さんの選択
 4)アルツハイマーなんか怖くない・・・多児(たに)貞子さんの選択
 5)あえて一人暮らしを選ぶ・・・柳豊子さんの選択
 6)老人ホームで暮らす・・・菅谷直子さんの選択
 7)山一つまるごと福祉のコミュニティ・・・愛知県・ゴジカラ村だより 
 終章 人間らしく、最後まで

 この本は介護保険の始まる前に書かれた。先月、中央図書館でみつけて借りてきた。私は高見澤たか子さんも、その他の有名な方々の本も読んでいなかったので、不勉強を恥じたわけ。
 第4章の「アルツハイマーなんか怖くない」を読んでいたら、最初が「ボケを楽しむ」というのだ。びっくりした。「ぼけ」を楽しむなんて無理だ。
「寒さにもめげず、母もボルボも元気にしています。近頃、母がドッグフードを好んでたべるようになり、それをボルボが食べなくなりました。ドーナッテンノ!」というはがき。ボルボは愛犬だ。
 高見澤さんは「ふつう、親がボケたりすると、家族はそれを隠して、他人の目になるべくふれないようにする」と書いておられる。ところが多児さんは「寝たきりじゃないんだから、母にはせいぜいボケを楽しんで暮らしてもらいたい」と公言している。
 これもどうかな?本人が「ボケを楽しむ」とは思えない。だって、うちのばあちゃんは「頭がいんでもぅた」ことはときどきわかるので「どないしたらええねん?」とひどく不安がるからである。夕方になると「もう、いにます」と言って出て行くからである。
 「エライ!とてもふつうではできない親孝行だ
と仲間がほめると、多児さんは「あんまり親孝行じゃないからできるのよ」と笑いとばす。では「その秘訣は・・・」
1.ボケたことを言いふらす。
2.おかしな話にも話を合わせる。
3.行方不明になっても探さない。
4.発想の転換でイライラ解消。
5.一生懸命にやらない。
 これにもびっくり仰天だ。私の5か条は
1.完璧を求めない。介護にも生活にも・・・適当でよい。
2.自分が嫌いなことはやらない。
3.それまで好きだったこともやめない。
4.なるべくばあちゃんから離れて暮らす。そのためにサービスを利用する。
5.新しい出会いを大切にする。
 う〜ん。似ているのは、5)と1)の「完璧を求めない」ぐらい。
 ばあちゃんは「うろつく」が「行方不明」にはならなかった。「神社におったよ」と言ってくれる人がいたり、「あの十字路を曲がった」と言ってもらったりもあったが、大体は畑の上の施設を見て「電気、ついとる。呼んどってや」と言って行ってしまうもの。「ばあちゃんが来てます」と電話がかかってきた。施設では「杖を振り回して怒ってます」もあったが「はんこ押しをしてもらっています」と言われて、見ると茶色の封筒にゴム印を押していた。うまく保護してもらっていた。多児さんと同じく周りの協力をあおぐのが一番だ。
 なああんだ、私よりももっと先に同じような結論に行きついた人がいたのかぁ〜。
 10年以上も前にこれを書かれた高見澤さんだから、私の「たたかうおばあちゃんが行く!」を読んで笑っておられたのだ。だからすぐにとても優しいおはがきを下さったのだと思って嬉しくなった。ありがとうございました。ほんとに昔は、いやいまも不勉強でした。