温度差

 少し前に、テレビを見ているとアーティストの方がコンサートの話をされていた。
 「こんな時期だから自粛すべきだ」とか、「いや、自粛しないで頑張ってやりながら、被災地を支援しよう」とか・・・。両方とも正しいと思う。
 私たち、阪神淡路大震災経験者はその時に学んだことがたくさんある。
 新聞を見ても、被災地を遠く離れて関西に来た人に対する支援をするだけの市民ボランティアネットワークのあるところは、公営住宅に入居した人にいち早く、家具家財を持ち寄ったり、ボランティアで子供の学習や遊びの支援をしている。そういう市民の活動が足りないところもある。いろいろだけれど、人は少しずつ学んでいくと思う。
 アーティストの方は「九州でコンサートをしたら、たくさんの方が聞きに来てくださった。自分が『こんなときに笑っていていいのか?』と思いながら言ったことばに、普通に笑ってもらうと、温度差を感じる」という意味のことを言われた。
 温度差はあるものだ。阪神淡路大震災のときも、被災地をちょっと離れると、大阪も京都も「普通の日常」なのだ。それがまぶしいし、空しいし、桜の花が哀しい。でも、「そんなこと、言っていられない。生きるしかない」のも、それはそうなのだ。
 被災された皆様もどうか、お元気でいてください。