「三陸海岸大津波」吉村 昭著 文芸春秋・文春文庫 2004年

 原題は「海の壁 三陸海岸津波」というそうで、1970年、中央公論社の刊。
 吉村さんが三陸海岸を何度か旅して、小説の舞台にしたりしておられたころ、津波のことが気にかかり、史料を集めたり、体験談を聞いてまわったりして書かれた。
1.明治29年の津波 ・・・前兆、被害、挿話、余談、津波の歴史
2.昭和8年の津波 ・・・津波・海嘯・よだ、波高、前兆、来週、田老と津波、住民、子供の眼、救援
3.チリ地震津波 ・・・のっこ、のっことやって来た、予知、津波との戦い

 この本は読みやすい。「小説家の腕」だろうと思う。明治の津波の「挿絵」がのっている。「風俗画報 大海嘯被害録」というらしい。
 チリ地震津波は、昭和35年(1960年)のことなので、私も6年生であり、かなり覚えている。「津波」とは怖いものだという記憶として焼きついた。山の中の小学生であり、海を感じることもなく、大きな波を見たこともなかったので、海の魅力を知らず、押し寄せる津波を「怖い」とだけ思った。