「ゆう子が来たよ」という声で、走って出たら、いた!
 幽霊だとすぐにわかった。だって、うんと小さいんだもの。ゆう子が怖がらないように、私も姿勢を低くして、目線を合わせた。
「ゆう子ちゃん、よう来てくれたね。会いたかったよ」と言った。ゆう子ちゃんは、綺麗だった。私が知り合う前よりずっと若い。美人で惚れぼれする。
 ゆう子ちゃんは「来ても良かったの?」と思っているかのように、向こうを向いてから、振り返った。
「ゆう子ちゃん、こないだ、京都へ行ったよ。ゆう子ちゃんと行ったよねえ」と言うと、空を見上げて「あ、おばあちゃん!」と言う。空は青くも黒くもなくて、わからない。ぼやーっと、色の濃い塊があるような・・・。
 私は「うん、おばあちゃん、来たよ。『孫にお嫁さん、連れて来たで!』言うてなぁ」と言った。言いながら「嘘ばっかり言うてるなあ、私」と思う。何でもいい。ちょっとでも長く、 ゆう子ちゃんと話していたかった。
 夢だとわかっているのに、引き伸ばしたかった。
 いつも「もう会えなくても後悔しないように、いつも、せいいっぱいつきあう」と言いながら・・・。矛盾するやんか? 未練があったのだろうか?
 ひとがなくなったときに「寂しくなったね」と言われても、寂しく思うことはない。私が天邪鬼なのだろう。でも、時にふれ、「ゆう子ちゃんなら、こんな時、どう言うだろう?」とは思うのよ。
 早過ぎたんだ!私よりずっと若かったんだもの。
 「ゆうこ」は優子と書きます。「やさしいこ、と書くのよ」・・・(仮名です)