「ぽーれぽーれ10月号」認知症の人と家族の会

 「高見会長の一筆啓上 No.250」転載
 「会員のみなさんお元気ですか。
 8月9日に名古屋地裁で出された判決には到底、納得がいきません。
 その判決とは・・・。
 認知症の人が線路に入り電車にはねられて死亡したことにより電車の遅れなどでJRに与えた損害720万円は、残された遺族が払うべし、というものです。
 事件は2007年12月7日の夕方、愛知県大府市の男性(91)が、要介護1の妻(85)がまどろむ間に外出。東海道線共和駅で線路に入り、電車にはねられて死亡。
 男性は要介護4で、週6日のデイサービスを使い、妻と、介護のために横浜市から近所に転居した長男の嫁の介護を受けていました。
 判決は、妻には『見守りを怠った』、長男には『事実上の監督者として、徘徊を防止する適切な措置を講じていなかった』として、『過失の責任は免れない』というものです(新聞記事などから)。
 この判決についてみなさんはどう思いますか?
 こんなこと言われたら、家族は介護などやってられない! 自身も要介護1である85歳の妻が毎日の世話をしており、長男も転居してまで両親をささえていたではないか。こんなに一生懸命介護をしていても、なお責任を問われるのか!
 介護を経験した者なら誰でもこう思いますよね。私もそう思います。
 しかし私は、もう一歩踏み込んで考えてみたいのです。
 もしこの妻がもっと若くて、長男が介護に無関心で、そして“一生懸命”介護をしていなかったら、どう考えますか?
 私はそうであっても家族に賠償責任を課してはいけないと思うのです。
 つまり柱にでもくくり付けておくか、部屋にカギでも掛けておかない限り認知症の人の徘徊は防ぎきれません。家族の“一生懸命”の度合いによって防げたり防げなかったりするものではありません。そもそも、一生懸命かどうかはどうして決めるのですか。
 認知症であるがゆえの固有の行動は家族の責任にしてはいけないと私は思います。
 ただ、現に損害を被った人がいることも事実です。こちらもその人の責任ではありません。その損害は何らかの形で保障されなければなりません。ここをどうするか?知恵の絞りどころです。
 『家族の会』では、これらのことをもう少しみんなで考えてゆくつもりです。
 それでは、また来月まで、がんばってください。」

 高見会長さんに去年の全国研究集会でお会いした。
 この判決については、私たちも「おかしい」「やってられない」と思いながら、意見を言うほど明確に問題点をつかめていなかった。高見会長さんにまとめてもらうと「そうか!」とわかる。「家族の会」はありがたい。
 でもな、それよりも「JRは踏み切りをなくせ!」 ほかの私鉄はどんどん高架になっているよ。「人身事故で遅れます」などと、1時間も電車が止まったりしないよ。踏切をなくせ。「助けに入ってはねられて死亡」という事故もなくせるだろう。