市民福祉情報・オフィス・ハスカップカップ より転載
「参議院厚生労働委員会委員に要望書を提出しました(2013.11.27)」
市民福祉情報オフィス・ハスカップは臨時国会に提出されている社会保障ブログラム法案(衆議院厚生労働委員会は可決、参議院厚生労働委員会で審議中)について、つぎのような要望書を参議院厚生労働委員会の委員25人に渡しました。
要支援者への介護サービスを減らすプログラム法案についての要望書
市民福祉情報オフィス・ハスカップは2003年から介護保険についてのセミナーや電話相談などを実施している市民活動団体です。
「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」(以下、プログラム法案)は衆議院厚生労働委員会で可決され、参議院厚生労働委員会で審議がはじまっています。
同時に社会保障審議会介護保険部会(以下、介護保険部会)は通常国会に提出予定の介護保険法改正案の論点整理が終盤を迎えています。
介護保険は法律と介護報酬の改定のたびに複雑になり、制度施行当初に語られた高齢当事者の「自己決定・自己選択」のしくみから遠ざかりつつありますが、今回のプログラム法案と介護保険部会の「論点」を突きあわせると多くの懸念が出てきます。
介護保険の基本原則を守るために、ぜひ、下記についてご検討くださいますようお願いいたします。
1. 「地域の実情に応じた要支援者への支援の見直し」法律案要綱四-2-(二)
介護保険制度では、介護保険料を払う被保険者(現在、約7,000万人)は介護認定を受けて初めてサービス(給付)を利用する権利(受給権)を得ます。
プログラム法案には、「要支援者への支援の見直し」を行うとあります。
介護保険部会では要支援者(要支援1・2)のホームヘルプ・サービス(介護予防訪問介護)とデイサービス(介護予防通所介護)を市区町村事業である地域支援事業(「介護予防・生活支援サービス事業」を新設)に移すとともに、その事業費は給付の伸び率ではなく、後期高齢者の伸び率にあわせて抑制するという論点が出ています。
要支援認定者は157万人で、全認定者(572万人)の約3割を占めますが、給付費は5.7%とささやかです。
そして、ホームヘルプ・サービスとデイサービスはそれぞれ利用者が40万人を超える一番人気のサービスです。
病気や障害をもつひとり暮らしや高齢夫婦の生活は、介護サービスを利用することでかろうじて維持されています。
働く子世代が介護離職することなく別居介護が成り立つのも、介護保険の支えがあるからです。
要支援者向けの「介護予防・生活支援サービス事業」構想では、介護予防サービスよりさらに市区町村格差が広がります。
要支援者へのサービスを縮小しないでください。
プログラム法案から「要支援者への支援の見直し」を削除してください。
2.「一定以上の所得を有する者の介護保険の保険給付に係る利用者負担の見直し」法律案要綱四-2-(三)
社会保障制度改革国民会議は「負担可能な者は応分の負担を行う」とし、プログラム法案には「一定以上の所得を有する者の介護保険の保険給付に係る利用者負担の見直し」があります。
介護保険部会では「一定以上所得者の利用料は2割負担」という論点があり、「一定以上所得者」として年収280万円以上、年収290万円以上の2案が出ています。
しかし、後期高齢者医療制度で3割負担となる「現役並み所得者」は年収383万円以上です。
「一定以上」や「相対的」な負担能力で利用料が2倍になるのは、「負担可能」な範囲でしょうか。
サービスが必要なのに "利用控え"する人が増えないよう、「一定以上の所得」の定義について慎重な議論をしてください。
2013年11月27日
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰 小竹雅子
資料1 要支援認定者にホームヘルプ・サービスとデイサービスは大切な支援です
介護予防サービス利用者(101万人)
介護予防ホームヘルプ・サービス 44万人(利用者の43%)
介護予防デイサービス 44万人(利用者の43%)
介護予防福祉用具レンタル 28万人(利用者の27%)
介護予防訪問看護 4万人(利用者の4%)
政府統計の総合窓口「介護給付費実態調査月報(2013年9月審査分)」
資料2 要支援認定者が使う費用は5.7%とささやかです
2011年度費用額(7兆9,409億2,931万円)
介護予防サービス 4,509億5,859万円(5.7%)
介護サービス 7兆4,899億7,072万円(94.3%)
2011年度給付費(6兆7,829億7,891万円)
介護予防サービス 4,105億9,994万円(5.7%)
介護サービス 6兆7,829億7,891万円(94.3%)
政府統計の総合窓口「2011年度介護保険事業状況報告(年報)」
資料3 市区町村事業(地域支援事業)の実施自治体は6割、利用率は1割に届きません
介護予防事業(地域支援事業)
二次予防事業の参加目標人数 148万7,433人(高齢者人口の5%)
基本チェックリスト配布者 1,658万6,054人(55.8%)
二次予防事業の対象者 259万0,792人(8.7%)
二次予防事業の利用者 22万5,667人(0.8%)
二次予防事業対象者の利用率 8.7%
二次予防事業の目標達成率 15.1%