眠り姫

 ばあちゃんは昨日、3時過ぎに昼寝してから、夕方「しんどいから、ご飯、食べんと寝る」と3回言って来た。4回目は「ご飯、食べよぅか?」と来た。熱もないし、お経をあげてご飯を食べて、風呂に入って寝た。なんと、よく眠ること。
 今朝は5時に「起きよぅか?」と言うので、また寝かせて、8時半まで寝ていた。昔「寝られへん」と言って入眠剤をもらっていた頃が、嘘のようだ。主治医は「不眠症だ」と思っておられた。毎晩「眠り薬」と言って、飲んでいた。違うのだ。寝る時刻が早いので、3時間も寝たら目が覚める。それからあとが眠れないのだ。朝までに何度も目が覚めるのだろう。「それなら、眠る時刻を遅くしたら」と言われたが、起きていてもすることがない。布団に入れば、テレビを子守唄にして眠ってしまう。
 そのうち、目が覚めるたびに薬を飲むようになった。一晩に3錠も減っていた。これはいかん。主治医にお願いして、ばあちゃんをだまし、薬を「偽もの」に替えてもらった。ビタミン剤だったと思う。それでも、平気で飲んでいた。本人は「安定剤は効く」と思っていたようだ。薬剤師さんが「偽薬のほうが、いいですよ。このごろは、私の説明を聞いてくれますよ。以前は、説明しても、うわのそらで、聞いてくれませんでした」と言われた。びっくりだ。「安定剤をやめたら、精神が安定した」
 
 ところで、友達のお姑さんが、90代半ばで手術をした。血行不良の「壊疽」というので、足を切断したのだ。頑張って手術に耐えた。ところが、体力が回復せずに「眠り姫」になったのだそうだ。眠ってばかりって、どんなのだろう? 切断した痛みはないのだろうか? いつ、目が覚めるのだろう?