グループホームの見学

 さくら会(痴呆老人の家族の会)とひまわり会(寝たきり老人の家族の会)合同で、見学に行った。尼崎市にある「さわやか診療所」というところ。ビルなので、診療所が1階、デイケアが3階、グループホームが4階というふうに分かれている。案内の盛さん(もりさん)が「都市型です。珍しいのです」と言われたのだが、申し訳ない。グループホームに初めて行ったので、どこが珍しいのか、わからない。普通の民家を使ってやっているところがあるのだそうだからかな。
 でも、都市型って、なかなか良い。リビングが皆の共有らしく、くつろいでおられた。右の奥に台所があった。ここにお住まいのおばあちゃんとスタッフが、なにやら、作っておられた。
 反対側に行くと、通路をはさんで両側に個室があった。それぞれに表札を出しておられた。「弥生さん、お部屋、見せてくださいね」と頼むと「なんで、名前、知ってるの?」とおっしゃるの。「だって、表札が出てるじゃない」と言うと「あ、そうか」と、なんとも、とぼけた返事が楽しい。だから「ぼけ」って、「とぼけてる」だけだから、わざわざ「認知症」なんて、わけのわからん言葉に置き換える必要はないんだってば。お役所の皆さん、そんな暇があるなら、ここのばあちゃんとじいちゃんの顔を、見においでよ。楽しそうだよ。弥生さんは、お仏壇と、なかなか古風で使い込んだたんすを持って来て部屋に置いていたし、家族の写真も小さいけど綺麗な額に入れて、張っていたよ。自分のなじみの物に囲まれると、落ち着くのかも知れないね。
 皆のリビングには、金魚もハムスターも飼われているし、お内裏様とお雛様も立派だった。大きくはないが、良い物だ、とわかる。
 暮らしている人は6人。「うちのばあちゃんのように『帰る!』と言って、怒る人はいませんか?」とたずねると「います。帰宅願望の強い人はいます」と言われた。どうやったら、落ち着くのでしょう?教えてほしいです。
 都市型の良いのは「これはこれで、普通だ」からだ。普通のマンションを借りてやっている「つどい場さくらちゃん」みたいに、リビングと小さい部屋があるわけだから。普通の民家と変わりはないだろう。ただ、平屋の一戸建てではなく、ビルの4階だという違いはあるけれど、それだって、窓のそばに行って「あら、ここ、4階なの?」と言わなければ、気づかない。
 エレベーターで屋上に上がれば、広くて、見晴らしも良い。ここなら、お食事会もお祭りもビアガーデンもできる。下へ降りると、庭にはブロッコリーとレタスが植えられていて、日課には「畑の水かけ」もある。桜もきんかんの木もある。もちろん、うちのばあちゃんには「物足りない狭さ」だけれど、都会のじいちゃん・ばあちゃんには、こんなもんだろう。駅から遠いぶん、静かだし、高層ビルに囲まれているわけでもないので、圧迫感がない。
 まるちゃんが訊く。「ずばり、グループホームって何ですか?」
 会員の一人が答える。「家族で介護していると、どうしても、きつい言葉で言ってしまう。他人なら、許せる事も、家族だと、つい、叱ってしまう。それが、こういう場があり、私達家族より、良い介護が受けられると思えば、私達はお世話になりたい。本人にとって、より良いと思えば、お願いしたい」 そうか。ものごとを見るときに、「本人にとっての、幸せ」という見方をすればよいのか、と教えてもらって、見学に来たかいがあった。また、いろいろ見てみたい。