「ふすまが、あれへん!」

 ばあちゃんは、ふすま張替えのステイからデイサービスに行き、3時に帰ってきた。ふすまは。まだ届いていない。押入れは丸見え、入り口の戸がない。ホームこたつも縁側に隠してある。さて、どうする? もちろん、怒った! 「ふすまがあれへんがな!」私が「『張り替えてもろて、おおきに』と言うんやで」と言うと、もっと怒った。とりあえず、着替え、に注意を向けて着替えがすんだら「畑、行ってくるわ」と言う。「はい、どうぞ」と言うと出て行った。
 すぐに、いとこ(ばあちゃんの姪)が来た。入ってもらって、ふすまの話をすると「おばちゃんが畑なら、見に行ってみるわ」と言う。そこへばあちゃんが帰ってきた。「畑に誰もおらへんで」「そりゃそうよ。私に『行ってきます』言うて、出て行ったよ」と言うと、理解不能。応接間に皆で入ったが、ばあちゃんの部屋との境目の戸も、ばあちゃんのふすまも無い!「こんなことして、ふすま、取ったら、あかへんがな!」また怒る。私が「張替えや」と言うと「勝手にこんなことして!なんにも言わんと!」
 ほっておいて、私だけお茶を入れに台所に行くと、いとこがやってきた。「怒って、怖いわ。おられへんから、帰るわ」と言う。「まあまあ、お茶でも」と言いながら、一緒に応接間にもどった。ばあちゃんに「ねえちゃんがお菓子、持ってきてくれたよ。ありがとう、言うんやで」と言うと、まだまだ怒っていたが、カステラを口に入れると、言わなくなった。「そら、すまんな。あんたも食べ」と言って、半分残した。いとこは「私は、家で食べてきたから、おばちゃんが、食べ」と言う。ばあちゃんは食べ終わると、また怒る。あきれたいとこは帰ってしまった。
 ばあちゃんは、また、畑に行った。5時に帰宅。ふすまは忘れたか、ベッドの電気毛布のコンセントを自分でさしてスィッチまで入れていた。あれまぁ。ご飯も待てないので、5時半に食べさせた。「もう、寝ます」と言うのを、引き止めて台所で待機。
 ふすまが来たのは、6時半だった。「ばあちゃん、来てごらん」と部屋に呼んで、目の前でふすまを入れて「綺麗になったな。ありがとう、言うんやで」と言っても、どこのことか、うわの空。こりゃ、なんじゃい?見えているか?ぼーっと眺めているだけか? ま、いいや。静かだから。さっさと風呂に入れて、寝かせた。怒った疲れと、畑の疲れで、よく寝てくれた。助かった。
 弟はそれから、二軒ぶんのふすまを入れに行って、やっと「飲むぞ〜」