3人寄れば

 昨日のふすまと畳ができて、弟が昼過ぎに持って来た。ばあちゃんはステイだ。夫も家にいるので、皆でいとこの家に納めに行った。新しい畳の良い香りがする。猫に破られたふすまも、紙と桟を替えたら新品のようになった。
 つぎに、いきつけのお好み焼きやさんに納めに行った。カウンター席のほかにある座敷の畳だ。5枚あった。そのうちの3枚には、畳の中ほどに、ガス管が通る穴があるので、一手間かかる。「綺麗になったわ。あと4年頑張るわ」とママが言う。「なんで、4年?」と訊くと「お客さんの還暦祝いを順番にしてあげたから、私の順番まで頑張って、祝ってもらうの」と言う。あはは。すごい。商売上手。
 弟が帰った。ママはどこやら電話をしたと思うと、しばらくして「お待たせ〜。呼んでくれてありがとう〜」と言いながら、先輩がやってきた。この人は夫がもう20年来、行っている「お食事処」のママだ。今は年に数えるほどしか行かないけれど。先輩と私が「うちのばあちゃんなぁ〜」と言いながら、ボケくらべをしていると、すみっこにおとなしく座っておられたお客さんが笑っている。夫が「すんませんなぁ。賑やかで...女三人、寄ったらあきまへんわ」と言う。「いやいや。おもしろいです」とおっしゃるので「こんな話、よそでは聞けませんやろ?」と言うと「そうですな。なかなか、本音トークは聞けません」ですって。「将来のために参考になります」ですって。
 先輩のおかあさんは、なかなかすごい。ステイから帰ると、自分の家を忘れたらしいので「ご飯をどうぞ」と出すと「もっと、気のきいたつまみは、無いのかい?」と言うのだそうだ。ステイで男の人の会話を聞いていて、真似をするんだろうか?だって、先輩とおかあさんがお店をしていた時だって、お客さんが先輩たちに「もっと気のきいたつまみ」なんて、言うだろうか?酔っ払ったら悪態をつく客なら言うのかな?言われていやだったのが、頭の底に残っていたのだろうか?本当のところは、おかあさんにしかわからない。
 また、先輩が家に帰ると、食器が無い。探すと、下駄箱に入っている。これは、きっと、おかあさんが「そろそろお客さんが来るから、用意しなくちゃ」と思って食器を出して、しばらくして、忘れ、気がつくと「あ、こんなとこに食器を置いて!なおしておかなくちゃ、誰かに盗られる」と思って、どこへ隠すか、考えたら下駄箱が見えた、なおせば、木の戸なので、中身は見えない、ということだろうか?おかあさんに訊いてもわからない。
「おかしいなぁ!」と笑えるのは、あとになってからだ。その時は、こっちも気持ちにゆとりが無いから「どこへやったのよ?!」となるのが常だ。今は介護者の我々二人と、まだお姑さんが元気なママとの三人で大笑いだ。
 私が「ばあちゃんはもう、私のことを忘れたらしいのよ。『奥さん』って呼ぶのよ」と言うと、ママが「寂しいね」と言う。二人で「そんなの、通り過ぎたよ。『私の子供は小さい時に死んでしまった』から『女の子は産んでません』になり、私を『おばちゃん』と呼び、次が『奥さん』でしょ。あれよ、あれよ、と眺めてるしかないわ」「そうよ、あれ、まだステイの気分ねえ、とか、ね」 当事者でないと、やっぱりわからないかな?