「おないどし」

 今年からうちの「小作人」になった人が来た。小作料はもらわないが、「畑をしたい」人には貸す。車から、ばあちゃんをおろして、その人はどこかへ消えた。
 ばあちゃんに会いに行ってみた。なんと!見覚えのある、宅老所のばあちゃんだ。ニックネーム、かってに「松ばあちゃん」とつける。「こんにちわ。この前、来たよね。やきいものとき」と私が言うと、松ばあちゃんが「あ、あの時」と言う。ついで「あんた、この近くの人?」ときく。私は、「この畑のもちぬしよ。おばあちゃんとこの息子さんが、今年から、ここに野菜を植えてるのよ。これがさつまいも。ばあちゃんのさつまいもよ」と言うと「へぇ〜、そうかね。うちが植えてるの?わたしに何も言わんと、植えてるの?」と言う。「いいの、いいの、若い者にまかせておけば、いいの。」と言うと、なおも「私に何も言わんと」と言う。これは、うちのばあちゃんと同じ症状だ。
 うちの「ゆきえばあちゃん」のところに行く。「これが、うちのばあちゃん。87歳」と紹介する。すると、松ばあちゃんは「おないどしや、わたし、たつや。」と言う。私は「うちのばあちゃんは、うま年やで。おないどし、ちがうけどなあ」と言う。まあ、この年になりゃあ、一つや二つの年の差なんて、かわらんか。
 もう、ほっといて、私は仕事に戻る。振り返ると、二人ばあちゃん、話、はずんどる。うちのばあちゃん、畑で人としゃべるなんて、久しくないことだ。なあに?この空気の共有は。道の段差になった石に腰掛けて、にこにことしゃべっているではないか! ときどき、私を指さしている所を見ると、松ばあちゃん「私に何も言わんと」ゆきえばあちゃん「うちかて、私のこと、とんじゃくしてへんで」...あはは!