宅老所

 ばあちゃんは、ステイから帰ったとき、時計をしていなかった。どこかで忘れたらしい。でも、あまり気にしていないので、時計なしのくらしを試している。
 昼になったので、迎えに行った。見慣れない車が2台も、畑の中の道に止まっている。その奥の木陰に集団がいるではないか!「宴会か〜?」ときいてみると、宅老所の人たちだ。朝の松ばあちゃんの仲間だ。うちのばあちゃんは初対面だ。「これが、たたかうおばあちゃん、本人か?」なんて、歓迎してくれる。
「ばあちゃんも一緒に、ご飯、食べよう」と言われて、おにぎりをもらった。「ほう〜、こんなん、くれての?えらい、すまんなあ」と言っておよばれだ。私もいただいた。おかずの唐辛子の煮物や奈良漬など、宅老所の食事にしては、辛い、味が濃いなあ。まるちゃんの煮物はもっと薄味だよ。老人施設は薄味じゃないの?普通の家庭の年よりは濃い味かも知れないね。
 ばあちゃんは、完全にデイサービス気分だ。お菓子までもらった。ぱくぱく食べる。「えらい、すまんな」を連発するので「ばあちゃん、お礼に、きゅうりなと、あげなはれ」と言うと「きゅうりなんか、植えてるか?」と言う。ばあちゃんが毎日、トマトを食べに行く、そのとなりにあるではないか。「私がとってきてあげるわ」と言って、取って来て渡すと「これ、みなさんで、食べて」とずいぶん、言いにくそうであった。なれないせりふだもんね。昔はたくさん植えて、いろんな人にあげていたけれど、ね。
 宅老所のみなさんには、赤しそ、ニラ、グラジオラスをプレゼントした。