「家に帰ります」

 朝の8時半に電話がかかってきた。ばあちゃんは起きたばかりだった。
 電話の彼は、27年ぶりだ。その間、年賀状のやりとりだけだった。それが最近、私の教え子の弟がなくなったことを聞いて、家にお線香をあげに行った。教え子とお母さんと三人でアルバムを見ながら思いで話をした。当時、その教え子は中学1年生で、弟は1歳だった。参観日などにはお母さんがよく連れて来ていた。教え子は、弟をお風呂に入れたりして、かわいがっている写真がたくさんあった。
 そして中学の時の個人アルバムに、彼が出て来た。学校に見学に来られたのだ。そのとき生徒と一緒に写真をとった。でも何で来たのだろう?どういうきっかけだったのだろう?思い出せない。
 彼に手紙を書き、「たたかうおばあちゃん」を同封した。そして、彼から電話。頭に浮かぶのは20才のときの「アルバムの中の顔」。不思議な気持ち。いろいろ近況報告を聞く。
 話をしていると、朝ご飯を待たされていたばあちゃんが「ご飯ないんやったら帰ります」と言いながら、麦わら帽子を手に取った。家はななくさか?あわてて、電話を切り、やっとばあちゃんの朝ご飯になった。