今日はじいちゃんの命日だ。ばあちゃんが、まだ家でぐずぐずしている間に、私はさっさと家を出た。畑の斜面で、じいちゃんが植えた「しきみ」を切る。
 そのとき、夫から電話がきた。「ばあちゃんが出て行った」と言う。すぐに、上の畑にあがってみると「小作人」が「また来ました!猪!」と言ってきた。1頭獲れたのに、また別のやつだろうか。「ばあちゃんは、来た?」と訊くと「来ましたよ。行く先はつきとめておりませんが」と言われた。そのとき、上の診療所の窓が開いて「ばあちゃんが来てるよ」と合図された。行ってみると、今日はおとなしく、診察中のベンチに腰かけていた。
 連れて出て、そのまま墓まで行った。墓は忘れていた。「じいちゃんの墓、どれや?」と言うと「知らん」と言う。「ばあちゃんが、入る墓やで」と嫌味を言うと、これはわかったらしく、むっとした。墓石に書いてある名前を見ながら探していたが、うちのは入り口に一番近いので、すぐにみつかった。「しきみ立てて」と言って、入れてもらった。