「心に届く話法 訓練  裁判官・検察・弁護士」朝日新聞1月13日

 「米国の専門家と合宿 アナ招き発声法研修   裁判員時代」
 法律の素人中心の裁判員にどう訴えるかが重要になる裁判員制度。導入される09年春が近づき、裁判官も検察官も弁護士も、話し方や説明能力を磨く訓練を始めた。外国から専門家を呼んで合宿したり、模擬裁判で映画キャラクターを引き合いにしてみたり、「わかりやすい裁判」への試行錯誤は続く。
 「動かないで左右均衡に立って、両手は胸の下で合わせる!」「これは『会話』なんですから、メモを読まずに証人の目を見て」
 12日、東京都新宿区の早稲田大キャンパス。日弁連主催の「法廷弁護指導者養成プログラム」は、2泊3日の缶詰め合宿の初日を迎えた。米国人のマイケル・ケリー弁護士が身ぶり手ぶりを交えて「ダメだし」を繰り返した。(中略)
 受講生たちを戸惑わせたのが「〜しましたか」「〜を見ましたか」という質問への「禁止令」だった。「こういう質問からはイエスかノーしか引き出せない。その代わり『説明してみてください』『教えてください』を使ってください」とケリー弁護士。(中略)
 熊本地裁では去年11月、模擬裁判が開かれた。恋人を包丁で刺し殺した女が殺人罪に問われたという設定だ。
「包丁で2回刺したのだから、明確な殺意に基づいた犯行だ」と検察官は訴えた。すると、弁護士は女の自己防衛としてこう反論した。「1回刺されたのに、男は女のほうへ向かっていった。『ターミネーター』みたいなやつ、誰だって怖いでしょ」。弁護士は被害者を映画キャラクターに例えて女を擁護した。(中略)
 岐阜地裁は昨年6月、岐阜放送のアナウンサーを招いて「人をひきつける話し方」を研修した。裁判官ら約50人が参加。まずは複式呼吸による発声法。(略。早口言葉など)