医療の話 長尾和宏先生

 ここで講演するのは2回目です。前回とだぶる話があるかも知れません。私は今、49歳。あと1か月・2か月で50歳を目前にして、今まで自分で若いと思っていたが、折り返し点にきたわけです。開業して13年になります。
 最近、勤務医が「辞める」ことが増えました。これは「立ち去り型サボタージュ」です。西宮では先月、ある病院の副院長先生が退職して開業する道を選ばれました。今月だけで4軒開業された話を聞きました。いまや「医療崩壊」だと思われる事態になっています。なぜか?わからないことがいっぱいです。
 皆さん、まず「余命3か月」と診断されたらどうしますか?」(シーン)考えたこと、ありますか?
 私は大学を出て、阪大病院で働き始めました。毎日癌の人が運ばれてきます。苦しんで死んでいきます。1000枚を超える死亡診断書を書きました。阪神大震災のときは芦屋市民病院に勤めていました。平成7年に尼崎で開業しました。かんたんに患者さんは来ません。おおやさんの家に毎日、点滴に行きました。おおやさんはずっと自宅で過ごされ、救急車で病院に運ばれた1時間後に亡くなりました。今までに13年間で500人を看取りました。半数が自宅での看取りです。年に40人、週に1人のわりあいです。4年前から、クリニックは365日年中無休にしています。