「米作り」

参観に来たお母さんはたいへん少なかった。
5年1組30名。皆、先生の机を囲むように座っていた。
「まず、今、畑で取れるものは?」と言って、人参を見せた。葉っぱつき人参はスーパーでは売っていませんからね。5本のうち、4本はまっすぐで、1本は先が分かれている。「なんでやと思う?」と訊いたけど、誰もわからない。「土が細かいとまっすぐ伸びる。途中に石があって、伸びられずに分かれたのです。売り物にはなりません。でも、味は一緒です。まっすぐ育てるためには、石を拾って捨てます」
 ここで「畑のカレンダー」を見せる。野菜の種の袋を月ごとに貼り付けてある。
 
 いよいよ本題。「今日の話はお米を作る、ですね」
「それは、春に稲を植える、秋に取り入れてお米にする、その間は育てる、と、この3つに分かれます」
「植えるには、苗を育てる、田んぼを作る、を同時にして、5月末に植えます。苗を作るには、4月の末に種をまきますが、この時は子どもも手伝って家中でやります」と「育苗箱」と「敷き紙」「種籾はこの1合枡に1杯」を見せる。
「田んぼを作る」では模型で「畦」と田んぼを見せる。
「水はどうやって入れますか?」と質問が出て「山の中の池から水路を通って水がくるから、上の田から順に入れて、下へ落とす」と説明。「雨が降って水があふれませんか?」と訊くから「天気予報を毎日見て、雨の前には、水の入り口を閉めておく」と説明。なかなか鋭い。
「育てる」のに、必要なのは「水」と「お日様、つまり昼の暑さと夜の寒さ」つまり「人間が頑張って、あとはおてんとうさまのおかげ」
 「取り入れは、稲刈り、乾燥、うすすり、精米」
「コンバインで刈り取ると、最初に1合の種籾を蒔いた、この箱1枚分が、この籾袋1杯、20kgになります」と袋を見せたり「もみがら」や「ぬか」の実物を見せたり、「知ってる?」と訊いたり「なんでやと思う?」と訊いたりすると、よく考えて発言してくれる。
 9時から初めて、途中で「休憩しますか?」と訊いても「続ける」と言って、ついに1ユニットやってしまい、10時30分です。よく「もつ」でしょう。かなり集中力は良いですねぇ。感心した。
 「質問は?」と訊くと「どんな害虫がいますか?」「ウンカ、というのが、くると、ミステリーサークルみたいに、丸くどんと稲が倒れて、落ちた!という感じになりますよ」
「すずめを追い払うのは、どうしますか?「となりのおばちゃんは、田んぼにやってきて、ロケット花火をパンパン!と打ち上げると、すずめはパーッと逃げます。でも、おばちゃんが帰ってしまうと、またすずめは戻ってきます。田んぼに釣り糸のような細い糸を張り巡らす人がいます。網を張る人もいますが、あっちとこっちで引っ張るために、一人ではできません。
 うちのおじさんがしていたのは、友達が洋服やさんをしていて、もう要らなくなったマネキン人形をもらってきました。皆さんのクラスの先生は背が高いですが、マネキンさんも背が高くてね、こんな形!」とクニャッと実演すると、皆、笑ってくれたよ。小さい私がやるから笑えるよ。「すずめは逃げましたね〜。効きますね〜。でも、片付けるときにトラックに乗せて運んでいたら向うから来た車に『死体、積んでるんと違うか?』という顔で見られましたね。また小屋になおしていたら、友達が来て小屋の戸をあけて『キャーー!』と言ったこともありましたね」よく笑ってくれたよ。 

「でもね、すずめが来ても稲が全部なくなったりしません。それより困るのは、いのしし。いのしし、見たことありますか?」でかなりの子どもが手をあげる。さすが、六甲山狩猟禁止区域。「えさなんか、やらないでくださいね。私の友達は、車を運転していて、いのししに当たってしまい、いのししは気絶したけど、車が壊れて『修理費をいのししは払ってくれない!』と言って怒ってましたよ」
 「いのししはお米を食べますか?」「食べます。また、畦を壊して土の中の生き物を食べますが、何だと思いますか?」これはミミズだが、なかなか正解が出ない。「また、田んぼの泥の中で転びまわって、背中の虫をとります。それで、猪が来ると一晩でこの教室ぐらいの土地を荒らしてしまうので、とても困るんです。また、畑に来ると、たけのこ、かぼちゃ、とうもろこし、すいか、さつまいも、を食べます。冬になると来ません。それはいのししを取ってもいい期間があって、11月15日から2月15日までは取れます。足をくくるワナをかけたり、鉄砲撃ちさんが集団で捕まえたりします。そうすると火薬の臭いがしますから、いのししが来なくなります。山で栗を食べたりしているようです」あとで先生が「いのししの話が面白かった」と言っておられた。
 「わらはどんな利用法がありますか?」という質問を聞いていたので「わらじ」を探し出して持ってきた。比較のため「布ぞうり」も見せる。
 他にも子ども達は「どんな苦労がありますか?」「農薬は使いますか?」「カメムシに食われると、米はどんな害をうけますか?」とか、まぁ、答えに困るような質問を投げてきます。「またくるから呼んでください。1回では答えられません」と逃げてきました。あはは。昔と変わらず、あかん先生やったわ〜。でも、楽しかった。