バスに戻る 4時49分  悦子パパお疲れ

 悦子パパは、お疲れらしい。なにやら大声で言っておられる。
 だから「3泊はしんどい」と言ったのだ。知床に行ったときに実証済みだ。去年のバスの中で「来年は2泊にするか、3泊にするか」調査したとき、我々サポーターは「2泊がよい」と言うのに、一部、まるちゃんと参加者が「3泊」「せっかく来るから3泊」と言ったのだ。強行スケジュールにしなくても、疲れるのだ。
 パパは暴れている。「むずかしいわ...○○でいこぅな...〜のほうがええな...」興奮しすぎだ。バスからおりないでいたのに...
「母ちゃん、母ちゃん...わかるな、なぁ...」わからないよ〜。
 パパがずり落ちてきた。車椅子がからだに合ってない?そんなの、今朝からわかっていた。初対面の夫が見抜いて「ひも」をホテルでもらってきた。
「ケアマネの責任だ!」とまるちゃんが言う。それは違う!「長旅に出るのに、体に合わない車椅子を世話して、ケアマネが悪い!」違う。まるちゃんの責任だ。見抜けなかった「隊長のまるちゃん」だ。
 函館に行ったときも、安永さんに「もっと早くに参加者の健康状況を書いて知らせてくれ。何もわからないでは対処できないではないか」と叱られている。去年もヒヤッとすることがあり、私は「北海道にくる前に、まるちゃんちに一晩泊めて、健康観察してからにしてくれ」と言ったのだ。それは「お出かけタイ」にも伝えたので、今年の参加申込書には「障害者手帳・飲んでいる薬・気をつけること」の欄が作られていた。
 それでも足りない。車椅子で暮らすのに、パパは慣れていないのだろう?ケアマネにそこまでわかるもんか。明美さんみたいにちゃんと「良い車椅子」をレンタルしてこい、とまるちゃんが見てやるべきだった。
 あとで明美さんにきいてみたら「1ヶ月のレンタルで1200円」なのだそうだ。明美さんのご主人は体格が良いので、車椅子も大型でがっちりして、長旅用にリクライニングできる。1200円?旅の費用の1%だ。安いもんだ。ソフトクリーム4個分だ。悦子さんもしっかりしてね。
 安永さんが来た。「安永です。からだ、なおそうか?」と声をかけ、持ち上げる。パパは「だいぶ、年とったやろ?」誰のこと?「しんどいわな?」誰のこと?時々、わかったようなことを言う。これが「認知症」の特徴。
 「女優」ちゃんは「か〜ら〜す〜なぜ、泣くの〜」と歌っている。パパのすぐ前なのでパパの興奮が「女優ちゃんママ」に伝染しないようにしているのだ。上手にやっている。
 パパが「ちゃんとしてや!」と言う。周りが爆笑だ。時々、ピタッと合うんだもの。