「徘徊」ではなく「道順記憶障害・地誌的見当識障害」

(問い)認知症になると徘徊するようになるって聞いた。うちのお父さんもこの前大騒ぎになった。
 何でこんなことが起こるの?
 どうしたらよいの?

(答え)道順記憶障害・地誌的見当識障害 
 歩いてきた道順を記憶できないので、新しいところで迷いやすい。(道順記憶障害)《これが僕は苦手で奥さんに馬鹿にされています。友達は僕と反対側へ行くと正解だといいます。持って生まれたものであり、僕のせいではありません》
 今まで分かっていた場所の方向、距離などが分からなくなる。(地誌的見当識障害)
 迷子になりやすい。
  自分の家に帰ろうとする。居なくなったと思い込んでいる家族を捜しに出る。
  (あてもなくうろつく徘徊ではない)
 《この二つは頭頂葉の働きです。記憶は脳の横の部分、作業をつかさどるのが前の方、場面記憶障害とか、記憶は海馬というほど単純ではない》

迷子徘徊を区別して対処方法を考える。
  (迷子でつらい思いをした患者に「何をウロウロしていたの」というような態度で接すると、どんなにやさしくしても気持ちは通わない)
  迷子には目的地や目的となる対象がある。
  徘徊は確認行為か行動コントロールの障害。
  (道順記憶や地誌的見当識の問題ではない)

*家に帰ろうとして迷子になる場合(散歩・買い物・生家に帰るなど)
 とんでもないところまで行ってしまうので、その危険性をきちんと認識することが大切。《三日三晩歩き通す、とか、国道ではねられるとか、山の中で迷った、とか》
 つらさを共感した問いかけ、恐怖感を共有して次につなげる。
  「道に迷ったの?怖かったでしょう?つらかったでしょう?もう大丈夫。でも、いっぺん家に帰りましょう」など。
 外出欲求を満たす:決まった時間決まったコースの付き添い散歩、買い物、デイサービスの利用など。《かぎをつける。デイサービスの利用が一番良い。
 自分の家を楽しめるようにする。《会話。阪神の話》{岸川先生、阪神が好きですね。うちのばあちゃん、日本語が通じませんよ。もっと前は通じたかな?それでも自分の家は楽しめなくて「帰ります」と言いながら、送ってもらったデイやステイの施設のある方を指差してます。「おんな三界に家無し」みたいで可愛そうですよ}
 外出欲求を抑える:薬物療法。《独居老人や家族が働いていて昼間は一人になる人の場合、考えてみるかも?》
 せん妄状態の予防。

*家族を探して迷子になる場合
 通常は比較的近くにいることが多い。《家の近く》《だんなさんを探している。はた目にはウロウロ、本人は必死》
 さびしかったこと、不安だったことなどを共感。
  「誰か探しているんですか?それは心配ですね。でも、いっぺん家に帰ってみませんか?居るかもしれませんし」
  「ごめんね。さびしかったでしょう。でも、家にいてくれたら必ず帰ってくるからね」など。《絶対にこう言ってあげるべきです》
 常に家族の存在を解りやすくしておく。《別の部屋に行かない。ドアを開けておく》{そうなのよ。ばあちゃんが「だ〜れも、おってない」と言いながら、目の前の私を通り越して「お母ちゃん」を探している。私って何者?と言いながらトイレに入るのも後回し。まさか、赤ちゃんを育てるときみたいに、ドアを開けたままトイレに入れないのよ}
 不安が強い場合は抗うつ薬や、軽い精神安定剤を用いる。《デパスは使わない。グラマリールを使う。日本人にちょうどよい。医者に相談してください》{相談できる精神科医が近くにいれば悩みはしない。いないのだ。もともと山奥だったので医者が遠すぎる。と言いながら田んぼのそばに精神病院がある怖さ}

*家の中で徘徊する場合 
 周囲を確認しようとしている場合が多いと思われる。
 通常は外に出て行って迷子になることはない。
  探している事を確認。別の興味をひくようにする。
   「何か探してるの?一緒に探そうか?あ、そうだこっちに面白い写真があったけど、見る?」など。
 睡眠障害によるせん妄かどうかを確認。
 家の中から外がわかるようにする。
 家の中で、ドアなどで隠れている空間をなくす。《ドアが無い方が良い》

*動き回る、不意に外へ出て行く。
 迷子や徘徊というより、多動という概念の方がわかりやすい。
 +行動欲求コントロールの障害
  ピック病など前頭葉機能低下の人に多いと思われる。
  薬物療法で抑えていく。
  デイサービスの利用。
 +施設内などで環境に慣れず落ち着かない。《3ヶ月で覚える》
  生活の流れを記憶するまでの間様子を見る。《「食べてない」といわなくなるのは、ワゴン車がガラガラと来ると食事だという流れを覚えた》
  不安や怒りが強い場合は抗うつ薬精神安定剤を用いる。

*迷子・徘徊・多動は、生活している環境、介護している方の時間的体力的余裕によって症状の出方が異なる。
 その状況にあった対応を考える。
 絶対に公式を押しつけない。
 最終的には悲しい事故にあわない事を優先する。外出がわかる工夫やGPS、夜間は出られないように工夫した鍵などを用いる。
 《GPS、セコムは安い。1回100円ぐらいだと思う。50mまで精度があがった》