遊び

 ばあちゃんを昼寝させて、玄関で植木をいじっていたら、町内の奥さんが声をかけてきた。「何してるの?」って「これは遊びです。こちらが蜜柑でこちらはライチ。ライチを食べたあと、種を植木鉢に密集して蒔いたら、全部生えたの」
 芽生えの苗の根元に、種が浮き上がるように地面の上に逆立ちしていた。それを引っこ抜いて植木鉢に植え替えたら、またまた全部が根付いた。それをビニール温室にいれてある。試しに1本だけ大きな鉢に植え替えてみるつもりなのだ。だから、遊び。
 そこへ乗用車が止まり、従姉妹が降りてきた。そして二人で道端でしゃべり始める。「こんなところでしゃべってないで、うちに入りよ」と誘うのだが「いや、そんなゆっくりしとられへん。すぐに畑に行くねん」と言いながら、しゃべっている。
 家の中で声がする。ばあちゃんが起きてきた。靴をはかせて連れて出る。「シルバーカーを押して歩くよ」と見せたいのに、ばあちゃんは「こんな物、要らん」とばかり、手を離し「おばちゃん、あっち、行こう」と従姉妹を誘う。まっすぐ行くらしい。どこへ?畑?「こっちにしよう」と言ってもきかないので、さっさとやめて家に帰った。あかん、他の人がいると、私のいうこと、さっぱりきかない。「ほかの人は優しい」と思っているらしい。こういう「ひとを見る」ところは今も抜け目が無い。