神戸労災病院を目指す

 神戸市の救急隊が到着していた。先生が紹介書とMRI画像を持って同乗してくださり、施設の職員さんは帰ることになる。夫は車で追いかけてくる。
 先生は救急車の中で説明してくださった。親切で丁寧な方で説明もよくわかった。「大動脈瘤はみつからないものなんです。あるという前提でMRIをとらないとみつかりません。普通は破裂してみるかるものです」はぁ〜、ばあちゃん、じっとしてないもんね。MRIなんて無理よ。頭部のCTやMRIさえ撮ってないもの。
 トンネルを通って15分ぐらいで到着。中に入る。私だけ受付で書類に記入。心臓血管外科のある階に上がる。ばあちゃんは集中治療室らしい。私は相談室で待機。本棚には看護師さんやらのプロ向けの本がズラリ...
 夫はまだ来ない。息子達に電話をかける。「ばあちゃんが入院してる。危ないと思うからそのつもりで」と言う。ばあちゃんの身内には驚かさないように「入院した」とだけ言う。90歳を過ぎたら何があってもおかしくない。覚悟はできている。
 先生が来られた。部長さんと主治医さん、若い先生という感じの3人だ。黒板にお腹の図を書いて「ここで破裂しています。この部分のすぐ上に大事な血管が集まっていて、手術は難しいです。確率は低いです。成功しても寝たきりになるかも知れません。手術中に亡くなることもありえます。どうなさいますか?」
 私は「母は90歳の去年まで畑で働きました。今日も歩いて、ご飯も食べました。もう十分だと思います」と答えた。「父が人工呼吸器につながれ、長く患いましたので、そのような目にあわせたくはありません」と言った。「わかりました。見守りましょう」ということになった。
 先生方が部屋を出られて、弟に電話をかけた。歯科医である。「手術しないでいいよね?」と言うと「しなくていい。大動脈瘤破裂は即死でもおかしくないよ」と言う。そうか、ばあちゃんは私が来るまで待っててくれたのね。
 夫が到着。看護師さんが来られ「入院手続き」をする。