「講演会の記録」ここから
次は「講演会」でもらったプリントに私が書き込んだものです。先生は「つぶやき」と「ぼやき」が面白いのです。それは( )で書きます。次は是非、あなたが参加なさって直に聞いてください。
1)認知症の薬物療法
*認知症疾患の薬物療法
*認知症状群の薬物療法
*身体症状への薬物療法
2)認知症疾患に対する薬物療法(認知症は「記憶力の低下」の話だけではない。動けなくなり、死んでいくのが病気です。高齢の場合は、そこまでいく前に、他の病気で死ぬこともあるし、天寿を全うすることもある)
*治療可能疾患 (どの先生も最初にチェックしているはずです。疾患があればなおせる。たとえば正常圧水頭症。薬によるものは飲むのをやめればなおる)
甲状腺機能低下症・・・甲状腺末
うつ病・・・抗うつ薬
*血管性認知症
再発防止・・・血液凝固抑制剤、血管拡張剤
*アルツハイマー病
アミロイドカスケード理論に基づく治験薬(治療薬ではない。症状を遅らせる)
*パーキンソン病、レビー小体病
ドーパミン活性増強治療
3)アミロイドカスケード理論
<難しいのでパス>
4)藍野病院で実施中の治験薬
*γ(ガンマ)−セレクターゼ阻害薬
*モノクローナル抗体(これは効かない。副作用がない。副作用のないものは効かない)
*中止になったもの(副作用がこわい)
β(ベータ)−セレクターゼ阻害薬
糖尿病薬の抗炎症作用薬
5)血管性認知症予防
*抗凝固剤(血を固まりにくくする)
アスピリン(これが一番良い)、パナルジンなど
内出血、脳出血の誘発に気をつける
アスピリンは胃潰瘍に気をつける(胃の薬を一緒に飲む。「ガスター10」「パリエット」など)
*血管拡張・抗凝固剤
アンプラーク、プレタールなど
頭痛、内出血などに気をつける
*高血圧薬
*糖尿病治療薬
*高脂血症(メタボ。これは薬よりも食事と運動。毎日30分歩くと効果がある。脳も刺激する)
6)認知症状群に対する薬物療法
認知症症状群
*認知機能障害
*精神症状・問題行動
*運動・知覚機能障害(これのほうが大事。人間は動く動物だから。体内知覚が大事)
*日常生活活動障害
7)認知機能障害に対する薬物療法
*脳機能全般の賦活
アリセプト・・・アルツハイマー病、レビー小体病、脳血管性認知症
L−dopa製剤・・・パーキンソン病
アマンダジン・・・脳血管性認知症
脳代謝賦活薬(サアミオンは僕は使わない。シンメトリルは幻覚・幻聴・妄想が出る)・・・脳血管性認知症
*注意集中力や意欲の改善
アマンダジン、SSRI(副作用が少ない)、SNRI
(アルツハイマー病の人に使ってはいけない薬がある。「これは何のために飲むんですか?」と医者にきけばよい)
8)アリセプトについて
*脳内部のアセチルコリンの分解を抑えることで量を増やす
*病気の進行を止めたり、記憶力を良くするわけではなく、脳機能全般を活性化する。活発になり反応や表情が豊かになる印象が強い。(活発になる。活発になるだけの人もいる)
*効果は早期の患者の3割程度と言われる。(あとの7割はデイサービスで補う。デイサービスが効く)(効く人は1週間で効く。1ヶ月が目安)
*重要な副作用:消化器症状[下痢、嘔吐など]、心機能[徐脈、心不全悪化]、[易興奮性](多い。200例に1例ぐらい)
*容量は柔軟に
*原理的にはアルツハイマー病の薬ではない。
レビー小体病の初期に良く効く。脳血管性認知症でも有効。
9)BPSD(昔でいう周辺症状)に対する薬物療法
疾患による違いに気をつける
*レビー小体病
幻覚・妄想に対しては、まずアリセプト。
可能な限り向精神薬は用いない。
*ピック病
初期から向精神薬が必要なことが多い。
*脳血管性認知症
前頭葉病変が主体ならピック病に準じる。
*アルツハイマー病
向精神薬などを用いるが、認知機能や運動機能を低下させる可能性の高いものはできるだけ用いない。
10)向精神薬について
*錐体(すいたい)外路症状の強いものは用いない。(体が動かなくなる)誤嚥、転倒リスクを避ける。
*セレネース、ベゲタミン、コントミン、などは使わない。他の薬がある。[リスパダールも用心して使う]
*セレクエル、ジプレキサ、エビリファイ、ロナセンなど。[場合によっては最少量の半分ないし四分の一量]
*錐体外路症状に対して抗コリン剤[アキネトンやアーテン]は用いない。
11)勘定・衝動性コントロール障害に抗てんかん薬
*必要以上に向精神薬を使わないために。
*感情易変性にはバルプロ酸 通常は200〜300mg/日
*衝動性・易怒性にはカルバマゼピン 通常は100〜200mg/日
*バルプロ酸の副作用;注意集中力低下に注意
*カルバマゼピンの副作用:小脳症状、薬疹に注意
*悪性症候群、横紋筋融解症やSJSに注意
12)不安・不眠
*可能な限りベンゾジアゼピン系製剤[デパス、セルシンなど]は用いない。
*SSRI[ルボックス、ジェイゾロフト、パキシル、リフレックスなど]、チアプリド[グラマリール]や少量のセロクエル、ジプレキサ、エビリファイなどを用いる。
*睡眠導入剤は筋弛緩作用の少ないものを[レンドルミン、リスミーなど]
*ハルシオンは禁忌。マイスリーも深夜の錯乱出現などに注意。
13)うつ
*脳血管性認知症や初期のアルツハイマー病に多い。
*抗コリン作用の強いものは可能な限り用いない。
旧来の抗うつ剤ではなくSSRIなどを。
*躁転、易興奮性の出現に気をつける。
*効果のない場合は環境調整に切り替える。
(抗うつ剤が効いたら、3年使う。3年後にちょうどゼロになるように減らす。「3年ねたろう」はたぶん本当だ。
14)運動機能障害
*パーキンソン病薬
+レビー小体病
+アルツハイマー病などの変性疾患後期
L−dopa製剤:マドパー、メネシットなどなど
ドパミンアゴニスト:ピ・シフロールなど
その他:エフピー、コムタンなど
*副作用:過量投与によるジスキネジア 幻覚、妄想、興奮、突発性睡眠など
15)身体症状への薬物療法
*脳機能に影響の強い薬はできるだけ避ける。
抗コリン作用の強い消化器系薬剤
抗ヒスタミン作用の強い薬剤
*例 プリンペラン[制吐剤]、パップフォー[抗頻尿剤]、ネオフィリン[喘息薬]、抗ヒスタミン作用の強い風邪薬[鼻水と目]など
16)薬を飲ませるときの注意
*教科書や薬剤添付文書の副作用記載以外の副作用が起こっても不思議はない。
*認知症の高齢者に対する副作用の知識を製薬会社はまだ充分に持っていない。
*新しく出された薬でおかしいなと思ったら、遠慮せずに処方した医者に聞く![薬を出すのは医者だが、飲んで副作用に苦しむのは医者ではない]
*医療保険の適応内容は、この分野の薬では特に、ほとんど現状を反映していない。