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【暮らし】東京新聞
<セカンドらいふ>『ケアラー連盟』が発足 介護者支える市民団体
2010年6月16日

 障害、高齢、病気などを抱える家族を支える介護者(ケアラー)。ケアに追われ孤立したり、困窮に直面することもある。そんな介護者を社会的に支えようと市民団体「ケアラー(家族など無償の介護者)連盟」(東京)が活動を始めた。 (飯田克志)

 「誰にも助けを求められず、頑張るしかなかった。自分が倒れたら共倒れ。悲しい事件(介護殺人)が後を絶たず、人ごととは思えない」

 東京都千代田区で今月七日開かれた、同連盟の発足集会。両親を一人で介護している女性が苦しい実情を話す。「生きていくための社会的支援を切望している」と訴えた。

 同連盟の発起人の一人で、東京都精神障害者家族会連合会(東京つくし会)の野村忠良会長(67)は母親や妻が精神疾患になり、三十代から家族会に参加した。

 「当事者が地域で自立するすべがほとんどなく、家族も地域に迷惑を掛けられないと、見守りのためにひきこもりがちになる。自分たちのことで精いっぱい」と介護者が置かれる状況を説明、家族を含めた支援の必要性を訴える。

 介護のための離職、介護者の高齢化、家族による介護を前提とした国の福祉サービス制度。結果として介護する親、配偶者、兄弟姉妹が社会から孤立することは少なくない。

 最悪の場合、介護疲れなどによる殺人・自殺に至ってしまう。日本福祉大の湯原悦子准教授(高齢者福祉)が実施した、一九九八〜二〇〇九年に報道された「介護殺人」の調査では、四百五十四件あった。介護保険制度が始まった二〇〇〇年以降も増加傾向だ。

 このうち加害者が病気など何らかの支援を必要としていたケースは百九十二件で約42%になった。

 同連盟が実施した介護者アンケート(回答二百五十人)でも、「孤立を感じた人」は50・4%、「心の不調がある人」は38・8%。将来の暮らし向きについて「大いに不安」は42・4%、「少し不安」は46・4%で、不安を感じている人は九割近くにのぼった。

 高齢者を介護する家族支援に取り組むNPO法人「介護者サポートネットワークセンター・アラジン」(東京)理事長で、同連盟共同代表の牧野史子さんは「介護者支援の必要性の社会的認知はほとんど進んでいないし、手だてもほとんどない」と指摘する。

 これまで介護者支援は、家族会などが互助的に地道に努力してきた。そのため障害や病気など「介護される人」ごとに活動が分かれがちだった。今回は横断的につながり、介護者支援の輪を広げるのが狙い。

 当面の目標は、実態が不明な介護者の現状把握、就業や余暇、社会参加など介護者の多様なニーズに対応した支援実現と、そのための政策提言だ。

 その中核となるのが、家族ら介護者の支援を社会に根付かせる基本となる法律の制定。同連盟は介護者の実態調査実施や、自治体の介護者支援センター設置、レスパイト(休息)施設の設置などを盛り込んだ法律案も策定している。

 共同代表の堀越栄子・日本女子大教授(生活経済)は「現在は女性だけでなく、男性、幅広い年代など多くの国民が介護に携わっている。介護者支援を普通の社会サービスにしていかないといけない」と呼び掛ける。

 問い合わせは同連盟=電03(3355)8028(月水金曜の午後一時〜同五時)。