高齢者ケアの後退をもたらす 「雑居部屋特養」の新設を許さない緊急集会アピール

(市民福祉情報オフィス・ハスカップ 小竹雅子)から
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高齢者ケアの後退をもたらす
「雑居部屋特養」の新設を許さない緊急集会アピール
「長生きするものだねぇ〜。4人部屋のときは、つらくて早くお迎えが来てほしかった。長生きしていることが恨めしかった。でも、今は、一人部屋で朝、ラジオも気兼ねしないで聴けるし、好きなことができる。4人部屋のままで死んでしまった人は、惜しかったねぇ」
介護保険法は、第一条で「要介護者の尊厳の保持」を規定しています。この条文にてらすと、要介護者はどのような状況にあっても、人としての尊厳の原則にそってあらゆる介護サービスが提供されるべきです。
心身が虚弱な高齢者が長い年月暮らす場として相部屋はふさわしくないこと、とりわけ認知症になった高齢者には過酷な環境であることが1990年代に入り明らかになりました。国は、介護保険制度の理念にもとづき、2002年、「個室ユニットケア」を制度化し、特養の新設はこれに限定するという方針を貫いてきました。将来的には個室ユニット特養の割合を7割にまであげるという政策方針をたてました。このことは、「全室個室ユニット特養」が標準であリ、その根拠は「高齢者の尊厳の保持」を規定した介護保険法にあるという解釈で一貫したものでした。
ところが、昨年来、いくつかの地方自治体から、個室と雑居部屋を混在させた特養の新設を認め、ユニット部分にユニット型の介護報酬を適用するよう、厚生労働省に対する要望が相次いでいます。理由として「個室ユニット型は居住費・食費などの自己負担が重く、低所得高齢者等の利用が困難だから多床室が必要である」ということが挙げられています。
低所得者には低所得者向け雑居部屋でよいのだ」というダブルスタンダードが、地方分権の名のもとに行われることを見過ごすことはできません。低所得者低所得者独特の低位の基準をあてはめるのは、19世紀に猛威をふるった救貧思想の再現にほかなりません。一部の自治体の都合で時計の針を逆行させることは許されません。
高齢者や障害者が日常生活を送る場が、プライバシーが守られるよう個室が基本であるべきことは、個人を尊重する憲法を持つ国として当然です。生活施設の居室が「1人」か「2人以上」かは、単なる人数の違いではなく、もっと本質的な違いなのです。
特養をはじめとする高齢者介護施設は単なる箱ではありません。高齢者の尊厳と自立を支援するための場です。施設水準が低下するとすれば、高齢者介護に携わる介護従事者のモラールを低めることにもつながることは各種の高齢者現場の調査をみても明らかです。
地域主権一括法」では、特養の居室定員は自治体が条例で定めることができるものとされ、国の示した基準は単なる「参酌標準」の扱いになろうとしています。これはきわめて危険です。
私たちは、介護保険法で規定されている「個人の尊厳」を脅かし、「負の遺産」を残すことになる昨今の動向に強い危機感を抱きました。今こそ市民と現場から声を上げなければという思いで、本日の緊急集会を開催しました。国や自治体は、特養の全室個室ユニット化の流れを後戻りさせないため、以下の措置を講ずるべきです。
■国がなすべきこと■
通常国会で継続審議になった地域主権一括法で「参酌すべき基準」となっている特養の「居室定員」を「従うべき基準」と修正し、全室個室ユニットを特養のナショナルミニマムとして再確認すべきである。
◯ 現在の省令・通知では、「2003年以前に設置された一部ユニット特養」にのみユニット部分の報酬上乗せが認められている。これに対して、いくつかの地方自治体が、「今後建設する一部ユニット型特養」にも、ユニット部分の報酬を認めるよう国に要請している。これは「負の遺産」を30年にわたって残すものであり断じて認められない。現行の取扱を堅持すべきである。また、いくつかの自治体が、一部ユニット型特養に、誤って個室ユニット報酬を支給していたが、これは明らかに法令違反であり、報酬が返還されなければ介護保険制度の根幹が揺らぐ。厚労省は、一部の自治体に対し報酬の返還をするよう求めるべきである。
◯ 個室ユニットの特養に入居する際に、その居住費等自己負担額の高さが問題となっているが、補足給付のあり方を再検討し、横浜市が実施しているような、居住費への公費補助の新設など、低所得者も個室ユニット特養に入居できるような制度改革を検討すべきである。
都道府県がなすべきこと■
都道府県は、低所得者でも個室ユニット型特養に入居できるよう、独自の施策を検討するとともに、国に対し、制度改革を要請すべきである。
■国と地方自治体が協働してなすべきこと■
◯ 特養待機者の問題は、雑居特養の増設では解消できない。国と地方自治体は、要介護者ができるだけ自宅で暮らすことができるよう、在宅福祉、医療資源の拡充に努めるとともに、要介護者が介護サービスを利用しながら安心して暮らすことができる高齢者住宅の整備を促進するための施策を積極的に進めるべきである
2010年6月27日
特養をよくする特養の会
特養ホームを良くする市民の会
「雑居部屋特養」の新設を許さない緊急集会 参加者一同