「がまんしないで、お母さん!」渡辺美恵著 発行・ソレイユ出版 発売・サンマーク 2000年 

プロローグ ・・・この本が生まれるまで
第1部 主婦が病に臥せるとき
第2部 愛したい、そしてもっと愛されたいの
第3部 日常にある幸せに気づく
第4部 五人の主婦と五つの家族物語
エピローグ
 渡辺美恵さんは現在は「NPO法人生活企画ジェフリー」の理事長をしておられる。副理事長である角田とよ子さん(「介護支え合い電話相談」室長)を通じて知り合った。「ジェフリー」の活動が面白そうだったので、図書を購入した。そしてこの本を送ってくださった。
 「エピローグ」から引用する。
 渡辺さんは1998年に「女性の病と家族の意識調査」というアンケートを実施し、その結果を「おんぶにだっこ・・・女性と家族の構造」(1999年、財団法人東京女性財団研究助成事業)として刊行された。
 調査対象は40代から50代の中高年女性とし、アンケート配布数は620、回収数は573で、回収率は92.4%。回答者の居住地は北海道から九州までの、1都1道1府20県に及ぶ。
 調査の場面を「病」としたのは、私たちにとって病は、もっとも危機的な状態だと思われるが、その危機に女性が遭遇したとき、夫は、家族はどう対応するのかを知りたかったそうだ。そしてその状況から、夫や家族の本音が露呈されるのではないかと推測された。その予想は見事に当たり、調査の結果は、女性にとってはかなり厳しいものだった。
 この本の第一部では、主婦のおかれている現実をまるごと受け止め、さまざまな思いを共有する。第2部では、一歩踏みこんで「なぜの構造」を考える。第3部では女性たちに「あしたからの希望薬」を処方する。第4部は、病と向き合った5人の女性たちの生き方である。
 この本が届いた日は、今年の暑さが一気にやってきた日であり、連日の農作業で少しばてていた。いつもの私のように「仕事がたてこみ、先が見えないといらいらする」「体力が落ちると、うつになる」寸前であった。届いてすぐに午後の仕事をやめて読み始め、読み進むと「なんか、今の私にも当てはまる。2000年に出た本なら、10年も前なのに」と思って、よけいにゆううつになってしまった。
 「エピローグ」から引用させてもらう。
 彼女達の多くは、妻・母・嫁・娘として、ひとりで何役もこなしながら、家庭内の切り盛りを一手に引き受けてきた。しかし、女性たちが家族を愛すれば愛するほど、家族は女性に甘え、頼るばかり。女性は、愛という呪縛に自己犠牲を強いられてきた。
 「いい妻」として夫を立てれば立てるほど、夫はますます古い男になってしまい、
 「いい母」として子どもに手をかければかけるほど、子どもは自立しなくなり、
 「いい嫁」として義父母に接すれば接するほど、義父母は無理をいい、
 「いい娘」として実父母を慈しめば慈しむほど、実父母は依存するばかり。
 女性がどんない家事に精を出しても、それに対する家族の対応に冷ややかなものが多かったのは、その根底に、性による役割分業観が根強く存在しているから。
 問題は当事者である女性みずからが声をあげないかぎり見えにくい。ちょっと大変でも、これからは夫や家族に「自分の思い」を積極的に伝える努力をする。
 渡辺さんは「大丈夫、あなたならできます」と書いておられる。
 できるかなあと、多少、不安である。
 「紫陽花の会」でも「親を見送ったあとの自分達夫婦の問題」「明日は我が身」になってきて、「もう〜夫は・・・」という話も出てくる。夫を介護しておられる方もいる。亡くされた方もいる。「自分達の」「自分の」問題と言うのはとても難しい。でも、渡辺さんに習ってみんなで考えたい。