「伴侶の家族の批判はしない」朝日新聞「声」2011月8月6日付け

 投稿者は岩本登さん(62歳)、会社役員の方。内容は
 「私の父は『娘3人を預けてある』とよく言っていた。娘とは我々3人兄弟の将来の花嫁の意味だったが、傷痍軍人で体が弱く、49歳の若さでその娘たちの顔を見ることなく他界した。私は28歳で結婚、2人の息子ができた。父風に言えば、娘2人をよそに預けていることになる。
 先日、一人暮らしをする次男から突然、婚約者に会わせたいと言われ、先方の親御さんと共にホテルでお会いした。ロビーで形ばかりのあいさつの後、喫茶室で始めて『我が娘』を見た。小柄で清楚な感じで、生前の父が言っていた『預けた娘』が我が家に来るという思いを実感した。
 私たち夫婦は結婚して34年だが、この間必ずしも順風満帆ではなかった。家内は48歳の時に脳腫瘍で10時間に及ぶ大手術を受け、52歳で大腸がんに。退院して今では家事をこなすまでになっている。
 新生活に入る息子にひと言。それは『決して相手方の家族、親族の非難はするな』ということである。ささいなことであっても、伴侶から身内の批判をされるのが最も傷つく。ほんの少し相手を思いやることで、何とかやっていけるものである。そして、次の新しい命につないでいって欲しいと願っている。」
 
 私もそう思う。ずっと思っていた。この方は本当に上手に書いておられるなあと思う。