「認知症の治療の目的は相互QOLの改善です」《Quality of Lives》

 認知症の方は介護者なしでは生活できません。
 患者さんと介護者相互のQOLの改善を図るのを治療の目的とします。
 治療方法
  1.症状のコントロール
  2.障害の理解と対応のためのアドバイス
  3.障害の改善を目指すセラピー

症状のコントロール
薬物療法・身体症状のコントロール
  脳機能障害を悪化させる要因の除去
+入院
  非社会的行動によるトラブルの回避
  難治性の精神症状の治療
  介護者の疲労の改善
  脳機能改善のためのセラピー
+介護者の対応方法と受容の改善《本人が受容するのも大変だが、介護者が受容するのも大変》

認知症になって とても、イライラしやすくなったし、怒りっぽくなった? こんな人じゃなかったのに・・・  元々、こんな人だったら別ですが
  それでも、困るなあ・・・

まず、何か原因がないか考えます。 
  1.体調不良や体の痛み《僕は内科だから、体を診ます。後輩の医者にも体を診る訓練をさせます。痛みでいらいらするのは、拷問がわかりやすい例です》
  2.夜間不眠・睡眠障害アルツハイマー病やパーキンソン病は睡眠のリズムの障害だと理解してもらいたい》
  3.不安・うつ《アルツハイマー病の6割、脳血管性の人がなりやすい》
  4.性格の極端化や前頭葉機能の低下《性格の極端化。少し前に診察に来た人は、これがひどくて入院した。奥さんが「これで私の40年間が救われました」と言われた。DV(ドメスティックバイオレンス家庭内暴力)だった。DVだった人がアルツハイマー病になるとすごい。暴力が止まらない。また、前頭葉機能低下の人が、怒りっぽくなったらあかん。手がつけられん》
  5.不満
 この順番で、考えていきます。

*体調不良や体の痛み 
 誰でもイライラするし、解ってもらえないと腹が立ち、怒りっぽくなります。
 多くの認知症疾患では、言語障害により、患者さんは体の不調や痛みをうまく表現できません。
 病気や進行状況によっては、脳の障害によって、自分の痛みや体調不良を正確に認識することができなくなっている可能性があります。《イライラしている人の体をさわってみると、痛みに気がつくことがある》
 パーキンソン症状のある人は、動きにくくなったことに苛立っている人もいます。《周りの人が「もたもたしているなぁ」と見ていることがわかると、よけいイライラする》

*夜間不眠・睡眠障害
 夜寝ないことは心身ともに、すべてにおいて良くありません。
 認知症疾患の多くは、その脳機能障害の結果として睡眠障害の症状を示します。《sun downと言いますね。3時や4時ごろから機嫌が悪くなるのは、その7割が睡眠障害です。》{そうだったのか。ばあちゃんがそもそも今の診療に通い始めたのは、不眠症、だった。睡眠導入剤を処方してもらっていた。夜、寝る前に飲んで、眠っているのに、次に目が覚めたとき「寝られへん」と言ってまた飲んでいた。そのうち記憶障害で、飲んだことを忘れ、一晩に何回も飲み、困るので「偽薬」に変えてもらい、検査入院を機会にやっとこの薬と縁を切れた、という長い歴史がある。これが認知症の元の脳の機能低下のせいだったのか。知らなかった}
 薬物によるコントロールを必要以上にためらうべきではありません。《薬の使用によって症状が悪くなったりしません。睡眠導入剤ではありません。睡眠導入剤を使うのは、10例のうち2例ぐらいです》
 昼間起こしておけば疲れて夜寝るだろうというのは、障害のない人の勝手な思い込みである場合が多いです。解釈を押し付けないように。《逆なんですよ。》{私は体が疲れすぎたり、気持ちが落ち込み過ぎると眠れない。眠れるのは健康の証拠だということになる。興奮すると眠れない。私は中途半端にお酒を飲むと眠れない。酔っ払ったら眠れるか?酔っ払うまで飲んだことがないのでわからない。眠れなくなる手前で飲むのをやめればよいわけだ。またばあちゃんは脳障害かい?80歳すぎたら、半分ぐらいの人はぼけるだろう?正常な老化現象だと思うけどな。そこがひっかかる。とかく精神科医は「認知症は病気」と言いたがる。老化現象説はどこかへひっこんだのだろうか?次回には是非、質問したい}

*不安・うつ
 ほとんどの認知症疾患では、この症状が現れやすいです。注意が必要です。《皆さんが昔、習った「うつ」のイメージは嘘です。「うつ」になると、シュンとしてうつむいている、動きの少ないイメージだと思い込まないように。また、日本人とアメリカ人の「うつ」も違います。アメリカ人は表現が激しく、こういう感じ...{滝川先生が、アッとか、ウッとか、顔を上下に振ったり、実演なさった。激しい動き} 近頃は日本でも若い人には攻撃的な「うつ」もあります》{もしかして、凶悪犯罪のうち、「うつ」が原因のもあるのかも?絶望が「自殺よりも死刑」を選ぶことがあるものね}
 お年寄りでは、“うつ”は苛立ちや怒りっぽさで現れることがあります。興奮しているとか、躁状態になっているなどと誤解されることもあります。{む?これ、ばあちゃんの「怒りんぼ」の原因?不眠もイライラも「うつ」が原因だとすると、説明はつくが、何故、毎月2回も受診していてわからなかったのだ?ばあちゃんの「失われた10年を返せ」と言いたい。内科のお医者さんだったが、特養も含む福祉センターのお医者さんだから、と思っていたのが、間違いか?「認知症」が専門じゃないのはわかるが、もっと目の前のばあちゃんを見て勉強してもらいたかった。「うつ」が苛立ちになるというのは「わかりません、おしえておくなはれ」と繰り返すばあちゃんを見れば容易にわかることである。「怒るんです」と言うデイのスタッフに「耳が遠いので聞こえません。近視だから見えません。わからないから怒るんです」と言っても「聞こえています。見えています」ととんちんかんだったもんね。}
 食欲低下、不眠、楽しみに興味を示さない・・・などの症状の型に気をつけてください。《すぐ寝るが、すぐ起きる、は不眠ですよ。抗うつ剤が効きます。興味がなくなる、というのが「うつ」です》

*正確の極端化や前頭葉機能の低下
 今までのような原因が見当たらなく、元々こういう傾向の強かった人や、いわゆるキレやすくなった人が考えられます。
 このような場合は介護者や周囲が危険です。
 専門医に薬物治療をしてもらったり、精神科病院などに入院させてもらう方がよいことが多いです。
《昨日の人はすごかったです。なんで家でみられるのか、頭が下がります。お年寄りの「考えられない犯罪」は脳障害のことがあります。哺乳類は「めす」がすべてなのです。おだやかです。「おす」は普段は要らないのです。要るのは繁殖のとき。それで「めす」を獲得するのに他の「おす」と闘うために攻撃的になるのです。このような暴力を振るう人は入院してもらって、薬を合わせると落ち着いてきます》{ばあちゃんも「怒るから精神科で薬をもらってください」とよく言われた。そのたび「ばあちゃんには薬は効かない」と言って退けてきた。結果、対応法の上達でおちついてはきたけれど、今、これを聞くと「病気だったのか!薬があるのか!」ほんと?信じられない。それ以上に信じられないのは、このように的確な診断を下せる精神科のお医者さんは私たちの周りには見当たらないということ!「さくら会・例会」に出席すれば「精神科でこんな目にあった」という家族の悲痛な泣き声に満ちている。今でも「鍵をかけ、紐でくくる」病院があるんだよ。ばあちゃんを脅しているだけではなく、本当にあるのだ!訴えてやる!}