ばあちゃん帰宅

 6泊7日だった。何やらつぶやきながら家に入る。
 ますます日本語が通じない。半角カタカナことばがますます速まる。なんと表現するかな?ばあちゃんを冷たく観察するからね。
 スタッフさんと話している間にさっさと部屋に行ってベッドに入っていた。布団を上半分めくると、しっかり上体を起こすので「服、ぬいで」と言うとハーフコートをぬいでまた布団に潜った。昼寝。
 3時半だ。もう1時間も寝ている。ようやく晴れたかな。洗濯物を外に干すかな。台所に入られないように鍵を1つかけたところで、廊下に音がした。ばあちゃんが応接間のところまで来ている。ほんとに、私が見えなくなると起きる癖は健在だ。
 応接間が暗い。戸を開けて一緒に入り、カーテンを開けに行く。開いていたら閉めたいらしい。「開けて」と言ってもわからない。手を持って一緒に閉めようとしてもできない。自発的行為は無意識なのだろうか。まあ時間はたっぷりあるし、手を取り誘導して閉める。
 ばあちゃんの部屋に行ってみる。ポータブルトイレは使っていない。今に限らずしばらく使っていない。忘れたのだろうか。縁側の雨戸はしっかり閉めてある。またまた開けてもらう。開け方は忘れたか、手間どるが、時間はたっぷりある。
 やっと開けて、トイレに行く。スリッパが自分のすぐ前になくても、離れていて少々横を向いていようと、平気で足を伸ばしてはく。だから運動神経は抜群なんだって。「パンツおろして」と言っても無駄。ばあちゃんの手をパンツにあてると半分ぐらいはおろせる。おろして腰かけると、うんちが出ていた。よかったね。ぬいでふいて、パッドをはずし、パンツを見るとこれはマジックテープのおむつだ。友達は「トイレで立たせておむつをはかせる。運動神経も筋肉も低下しないよ」と言っていたね。やってみる。ばあちゃんの背中に私の体を密着させて、ばあちゃんが逃げないようにしてやってみる。なかなかやりにくい。動かずじっとしていてくれるが、左をとめたら右がはずれ、ブカブカだし、これで真ん中かと心もとないし、足とおむつの隙間から漏れるんじゃないか?
 やっとのことでできて、手を洗わせて台所に行く。ズボンと靴下をはく。1つずつ渡せばはく。カーディガンを脱ぐと、セーターが後ろ向きだ。
 牛乳を飲む。あんパン三分の一を渡す。初め よし、なくなりかけると挙動不審。食べずにうかがう。「食べ!」と3回言ったかな。食べている横でこれを書いている。
 食べ終わるとそわそわする。しきりに「帰ります」「遅なる」関連のことを言う。押しつぶした声で「あっあっ」言いながらだから通じないよ。逃げようとして、右にある椅子を引いたり、乗り移ろうとしたり。
 4時50分、急に静かになり、前を見て、つまりテレビの方を見て「お母ちゃん」と言う。落ち着く時間なのか?「ほ ほ ほんまや。あっあっあー。ほんまや」「もう だめ」年貢の納めどきか?
 さて 晩ご飯にして寝てもらおう。