「脳科学者の母が、認知症になる 記憶を失うと、その人は“その人”でなくなるのか?」

恩蔵絢子著 河出書房新社 2018年

 はじめに 医者ではなく脳科学者として、母を見つめる

 1.65歳の母が、アルツハイマー認知症になった

 2.アルツハイマー認知症とはどういう病気か

 3.「治す」ではなく、「やれる」ことは何か_脳科学者的処方箋

 4.「その人らしさ」とは何か_自己と他者を分けるもの

 5.感情こそ知性である

 おわりに 父母と竿燈まつりに行く

 1月15日の朝日新聞に「認知症になっても、母は母のまま」という記事で紹介された。本の発行は1年以上前だ。

脳科学者として母をみつめる」と、お母さんの行動の原因を、脳のどの部分に障害が出てこうなるかを説明できる。脳の絵が描かれている。

たとえば「2.アルツハイマー認知症とはどういう病気か」の「図1.アルツハイマー病の要因」では、左の図で「正常な神経細胞」が示され、右の図の「アルツハイマー病」の脳には「神経原線維変化」と「老人斑」が見える。これを読むと、母と暮らしていた時の講演会を思い出す。講師が「認知症とは何ですか?」と問い、学生らしき若者が「いったん獲得した脳の機能が何らかの障害により低下して、日常生活に支障をきたす」と答えた。私が挙手して「年をとったら普通じゃないですか?」と問うと、答えがなかった。恩蔵さんの答えだと、問題は思うよりも複雑なのだそうだ。私も「年をとったら普通だ」と思わずに母の脳の中も調べてもらったらよかった。精神科の先生に一回「長谷川式スケール」をやってもらっただけだ。MRIも撮ってもらっていない。