水彩画展

 小島のぶ江さんは素敵な方だった。さわやか。ほんと、美人だ。女優さんだものね。
 ばあちゃんがデイに行ってから大阪駅の南側、アクティ大阪の27階に行った。1階からレストランのある階とこの27階への直通エレベーターがあり、外の景色が見える。エレベーターの箱に半円形のガラス部分がついていて、上がるにつれ足元に大阪の町が広がる。北側なので、JRの線路と広大な空き地が見える。27階は展望階と言って、北側と南側に展望ロビーがある。窓ガラスには、見えるビルの名前がのった説明が書いてある。そんなものを見ないでなんとなく「高いなぁ」ぐらいでいい。ギャラリーの矢印に沿って行くと「水彩画展」の入り口があった。受付に誰もいない。奥が倉庫らしく、レストランの従業員らしき人が大きな箱やらを持って通る。その通路の左側がガラスの展示部分になっている。
 小島さんの水彩画は犬と野菜たちだった。犬はもこもこの長い毛を持ち、愛らしい。昔の足ふみミシンの足台にあごをのせて寝ている。見る人が「かわいい!」「懐かしい足ふみミシン」と喜んでおられた。
 振り返ると受付に人がいる。小島さんのお友達で「児島さんは守屋愛子さんを迎えに行って一緒に来られるので、お昼ごろです。待ってください」と言われる。「たたかうおばあちゃん」だけ預けて帰ろうと思ったが、受付の椅子をだして「座って待って」と言われるので、座ってしまった。「たたかうおばあちゃん」をさしあげて話をすると「ここに名前を書いて。アドレスも書いて。ネットで読むから」と言われる。「お年はおいくつですか?」と訊くと?わからないなぁ。60代かな。70代かな?
 小島さんと守屋さんがみえた。初対面の挨拶をする。電話で一度話しただけだが、本を読んだ感想と「たたかうおばあちゃん」と私の写真入り通信まで入れたので、覚えていてくださった。おまけに次々に来られるお友達に「この方はお年寄りの介護をしておられるのよ」と紹介して「たたかうおばあちゃん」を差し出される。6冊持って行ったのに、ご自分の分だけ残し、あとはなくなった。これなら、私の「営業」とかわらないわ。あはは。
 おもしろいのは、ここは展望階で見物に来た人と、大丸に買い物に来た人が「水彩画展」の矢印に引かれて入ってこられる。絵が好きで、展覧会が好きだ、という感じの人もいたし、夏休みの親子連れもいた。中には「お金、いるの?」とズバリ訊く人がいる!「あぁ、中には入場料のいる個展もありますよね。でもここは無料です。素人ですから」と言うと「そうなの。最初に訊いておかんと、ね」と言うのが、いかにも大阪人でしょ。見てから「野菜の絵がおいしそうだわ。冬瓜でしょ」と言われる。とうがん、とうもろこし、きゅうり、竹の子、うど、どれもこれも上手で、生きているようで、おいしそう。竹の子で言うと「はっきり、力強い」ね。色も、形も。
 受付におられたお友達など「素人はすごいよ。プロの人は『売ろう』と思って描くでしょ。だから素人の方が上を行くわ。こわいよ」と言われた。なるほど、ね。
 守屋愛子さんは「俳句の絵本」に文章を書かれた方で、84歳だとおっしゃる。背中が丸いが、顔もにこにこ丸くて、目がほそくなるほど笑顔がかわいい。木彫りの観音様の額と小さな観音様6体を作られた。「長くやっていらっしゃるんですか?」と訊くと「6年」とおっしゃる。それなら80歳を目前にして新しい趣味に挑戦なさったことになる。それは素敵。えらい。「最初は難しくてね、どこをどう彫ったらよいか、わからなくてね...そのうち、できるようになって...」と言われた。
 素敵な方にお会いできてとてもよかった。