痰がからむ

 ばあちゃんはちかごろ、たまにご飯がつまる。あわてたわけでもない。水を飲んだわけでもない。以前は、つまっても上手に吐き出していたのに、このごろはできなくなっている。他にも、出来なくなっているのに気づく動作がある。もうだいぶ前「ご飯が熱いよ。ふーふーして」と言っても、口で「ふーふー」と言うだけで、息が吹けないのに気づいた。それからは、熱くない程度に冷めてから出すことにした。
 次に「鼻水が出てるよ。ふんふんして」と言ってちり紙を渡しても、口で「ふんふん」、これもできない。何度か言うとやっと「ちゅん」とかできたので、ああ、そうか、こういう動作は生まれて自然にできるものではな く、成長するとともに親が教えて身につくものなのだ、とわかったわけである。これは身体に何か障がいがあろ子どもを育てるときに応用できそうでしょ。
 食べ物がつまったとき、以前は吐き出せていた。「しんどい」と言いながら休んでいた。ばあちゃんが「なんでしんどいの?」と訊くので「ご飯がつまったのよ」と言っても、理解はできなかった。今は「げーげー」音だけ出していて、私が流しで「出しなさい」と言って、背中を上向きにさすると、少し出せる。口の中に貯めていたらしく、唾液と噛んだ食べ物が混じった状態かな。あとはどうしていいのか、わからないらしく、テーブルについていた。そのうち、ステイのお迎えが来た。説明すると「風邪を引いて痰が出るとき、痰がご飯粒にからんで飲み込めない。次から次から食べると、つかえる」あぁ、そうか。ばあちゃんはよく「ここに、つかえて」と言いながら胸をたたいているわ。
 命に別状は無いので、ステイに行った。のちほど電話がかかってきた。「痰に血が混じっていますので、診療所に行ってもいいですか?」「お願いします」と言って、診療所に見に行ったが、まだ来ていなかった。私が付き添う必要はなく、ステイの看護師さんがみてくださるので、私は帰ることにした。