「怪獣バーバー」から「借りてきた猫」へ

 私がパソコンをしているそばに座らせていたら、本を読んでいた。「ほ〜、『家の光』あんじょう、書いておます。はっきりしとります」と言いながら読んでいる字がでたらめだ。
 そのうち「帰ります」と言いだす。「帰らない、ここがうち」これはいくら教えてもだめ。
 勝手に外へ飛び出す。私の靴をはいて行く。まだ一人で出るのだ。危ない、危ない。
 「お使いに行こう」と裏口から長靴で行こうと言うと、抵抗する。外へ出ても歩かない。腕を持ってどんどん行くと、杖でなぐりにくる。杖を持って、後ろから押して歩くことにする。ばあちゃんは体重を後ろにかけてくるから重い、重い。おまけに急な坂道だから重い。私は汗だくになる。ばあちゃんは「死ぬ〜、死ぬ〜」とわめく。まったく、人がみたら何と思うだろう?「虐待」に見えるよね。まぁ、いいさ。すごいエネルギーのかたまりだ。「怪獣バーバー」だ。
 やっと目的の家に着いて、集金をする。そこの奥さんが「ばあちゃん、こっちよ」と手を引いてくれる。他人と私の区別はできている。他人は優しいもんね。また苦労して連れて帰る。友達が「おかしいわぁ〜、でも、笑うと、ばあちゃんが怒るから、我慢しとこぅ」と言うので笑える。これでないとまったく、「何をしている?」と思われる。
 苦労して連れて帰るのだが、途中で家が見えているのに歩かない。家の門の階段で止まってしまう。「ここで止まるとご飯がないよ」と言うと歩く!「静かにしないとご飯がないよ」と言うと、とたんに「借りてきた猫」になってしまった。おとなしく食べてお風呂に入り、寝てくれた!ふぅ〜、疲れたよ〜。ばあちゃんも疲れてくれた。これだけのエネルギーを使わないと寝られないん?かなわんよ〜。ただものではない。もう90歳だぜ。